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2013年5月発行ニュースレター (No.30) 掲載

第60回日本生態学会大会(静岡)総括報告

陀安一郎(大会企画委員会前委員長)

日本生態学会第60回大会(静岡大会)は、2013年3月5日〜9日にわたって行なわれました。参加者は2,423名にも達し、公式集会として、シンポジウム13件、フォーラム6件、企画集会17件が開催されました。また今回、日本生態学会60周年を記念して、別枠として60周年記念シンポジウムも開催されました。一般講演数は口頭発表211件、ポスター発表894件の合計1,105件となりました。非公式集会である自由集会は36件ありました。今回から正式に日本生態学会企画委員会の運営となった高校生ポスター発表も26件ありました。

今回の大会は中部地区の担当でしたが、静岡県で初めての開催となりました。現在の生態学会大会は2,000名を超える参加者が集まることが定着しております。並行してセッションを行なうことができる会場数を、今回は11会場ご用意いただきましたが、ある程度の人数を収容できる会場をたくさん用意することは、コンベンションセンターなどであっても難しい要求であります。一方、ポスター発表者が多い現在の大会では、大きなポスター会場が必要ですし、総会・受賞講演にもたくさんの方々が参加できる会場が必要となります。懇親会を行える宴会場も含めますと、大会を行える可能性のある都市がかなり限られるのではないかという懸念があります。その中で、今回大会実行委員会の中心になっていただいた静岡大学は少ない人数の中、増澤武弘大会会長、小南陽亮実行委員長を中心に大変なご努力をしていただきました。その上、実行委員会の方々も、静岡大学のほか、岐阜大学、信州大学、富山大学まで広がっており、地区会レベルのサポートも大変であったと思います。一連のご努力に感謝致します。

今期の大会企画委員会の運営について

今期の大会企画委員会は、複数部会に入っておられる方を含め59名で構成されました。登録受付、プログラム及び要旨集の編集・印刷など担当する運営部会(部会長: 畑田彩さん)、シンポジウムのコーディネート業務、各種集会の会 場割り振りなどを担当するシンポジウム部会(部会長:石田清さん)、口頭発表の順序と会場決め、プログラムの編成などを担当する発表編成部会(部会長:小南陽亮さん)、ポスター講演の割り振り、ポスター賞審査の段取りなどを担当するポスター部会(部会長:近藤倫生さん)の4部会に加え、新たに高校生ポスター部会を設置しました。東京大会から始まった高校生ポスターは、札幌大会、大津大会と、主として実行委員会が引き継いで運営しておりましたが、継続性を担保するためには企画委員会としての運営が不可欠ということで、本大会より正式に「高校生ポスター部会」として発足致しました。そして、東京大会の時に実行委員会および生態学会教育専門委員会として高校生ポスター発表を始められた嶋田正和さんに部会長となっていただきました。これらの経緯に関しては、日本生態学会誌でその取り組みに関して報告していただく予定ですので、ご期待ください。また、ポスター部会と高校生ポスター部会の連携のために、岸田治さんと山浦悠一さんには両方の連携を担っていただきました。嶋田部会長にはもう一年部会長をやっていただき、部会としての仕事をご整理いただき、今後の引き継ぎに関してもご検討いただくことになっております。高校生ポスター部会には、通常の学会員に対する対応以上の細かい対応をしていただきました。一方、高校生のポスター発表はどれもすぐれたもので感心しました。今回ご覧にならなかった学会員も次回はぜひご覧下さい。未来の生態学会を背負う人材がこの中から出てくるかもしれません。

また、高校生ポスターとともに若手の獲得に向けた方策として、今回学部学生以下に対して、聴講するだけの場合に限り参加費を無料にいたしました。いままで、学部学生であるかどうかということは申し込みフォームになかったため、学部学生が何人参加しているのかわかりませんでした。初めての試みのため、学生さんに伝わるのに時間を要しましたが、最終的に参加費免除で参加した数が297人に達し、それなりのインパクトがある数でした。ただ、これだけの無料参加者を抱えることは、経費の見通しを考える上で実行委員会の皆様に多大なご迷惑をおかけしました。また、皆さんの支払っていただいている参加費でカバーする訳ですから、議論すべきことはあると思います。できるだけ新しい学生さんに生態学会の魅力を伝え、学会に入ってもらうという目的を持ちながら、如何に収支バランスをとるのが最適であるか。今後、生態学会として考えていくべきかと思います。

次に、本大会において実施した「非学会員が大会での発表や企画の申し込みをするためには、既会員の申し込み期限の3週間前に入会の申し込みを行い、2週間前に支払いを行なうこと」という制度についてご説明申し上げます。この仕組みは大きな改変のため、5月の大会案内の時点から告知しておりましたが、必ずしも皆様にご理解いただけた訳ではございませんでした。そのため、急遽入会期限を延長致しましたが、延長後の申込数は無視できない数でした。広島大会においては、生態学会連絡用メーリングリスト[ESJ-Info]の積極的活用など、「入会期限」について積極的な広報活動に務めたいと思います。このやり方は、非学会員の大会参加を促す上記2点の制度と一見相反するように思われるかもしれません。今回の改訂は、いままで「講演するためには会員になってもらう必要がある」ということを理解しておられない人がいたため、それを一人一人チェックして会員になってもらうよう事務局がお願いするという手続きを省略することで、表面には出ないいろいろな手続きが簡単になりました。たとえば、チェックするステップを省略することによって、今回「企画集会・自由集会の提案締め切り」をいつもより遅らせることが可能になりました。ボランティアシステムをとる限り、いずれ皆さんにも大会企画委員として役割分担していただく可能性があります。新しい仕組みを作ることによって、毎年新しい締め切りを理解していただくために大会案内をじっくりお読みいただく必要があることは申し訳ないですが、システムとして定着していくことで、少しでも企画委員会の負担を減らすことも必要であることをご理解いただきたいと思います。

皆様の目に見えないところでの改変についてひとつ紹介します。いままでは、どの集会を並行開催するかに関しては、客観的に判断することは非常に難しいため、一切考慮しないという形ですすめてきました。しかし、今回シンポ部会において、石田清部会長と鈴木牧さんを中心にして、できるだけ似たような企画が並行して行なわれないように、自動的に振り分けるシステムを作成していただきました。また、学会の委員会が主催するフォーラムもできるだけ並行開催しないよう検討していただきました。参加される方すべてに納得していただくような配置を考えることは、そもそも「解けない問題」ではありますが、労力をかけずに少しでもうまく配置することができればそれに越したことはありません。今後どのようにすすめるかは、さらにシンポ部会で検討されることと思います。

本大会において、会場によっては、聴衆の方々すべてが会場に入れないような場面がありました。そのようにお感じになった方々には、ご迷惑をおかけいたしました。ただ、そもそもこの規模での開催地を選ぶことが大変になっていることもご理解いただきたいと思います。大会開催のためには、(1)受賞講演などのための大規模な会場、(2)多くのパラレルセッションを立てられるたくさんの中規模会場、(3)多くのポスターをゆったり配置するための大規模ホール、(4)たくさんの人を収容する懇親会会場、(5)大会参加者の宿泊地からの交通の便、(6)現地の実行委員会の方々の数。ざっと考えただけでもこれだけの条件を満たす場所はそんなにありません。2,000名を超える大会参加者を前提に、地区会持ち回りの現在の体制を継続する限り、大会を開催する負担がますます大きくなってきていることは生態学会全体として考えないといけない問題だと思います。

今後の大会に向けての企画委員会の取り組みについて

昨年度がEAFESとの合同大会であったために、今年いったん元に戻す前提でひとまずポスター賞の英語化を強力に押し進めました。その時に将来計画委員会が行なったアンケートを元にして、今回の総会でポスター賞の英語化についての提案がなされました。その上で、そもそも国際化とは何か、英語を用いれば良いのか、ポスター賞のそもそもの目的は、などの議論が白熱しました。これらの議論は何年も続いていますが、まだ全体のコンセンサスは得られていないようです。次回大会に向けて、現在将来計画委員会と大会企画委員会が連携して、どのような進め方をすればいいのかという議論をすすめています。その中で、英語発表賞という形で一つの試行が行なわれることになりつつあります。試みを通じて、よりよい生態学会大会のあり方を皆で考えていけることを期待しています。

今回、大会企画委員長としての反省点と一つして、自由集会のあり方について実行委員会と意識がずれていたことがありました。自由集会は昔から「関連集会」という位置づけであり、大会が開かれる会場のなかで「空いているスロットを利用した、自由な関連集会」という意味合いがあります。昨年度実行委員会のメンバーであったときには、それほど違和感は感じなく、また企画委員会として伝統的にこういうものであると思っていたのですが、コンベンションセンターなどでは安全対策として「参加者の把握」というのが強く要請されるようです。今後の大会では自由の中にも「参加者の把握」を企画委員会としても考えなければいけないということが改めて問題点として浮かびました。

生態学会参加者の意識と企画委員会のありかたについて述べたいと思います。上記に書きましたように、企画委員会は生態学会の意向を受けて大会のあり方を考えるとともに、実行委員会と議論してその時の会場に応じて実現可能な開催計画をたてます。生態学会の大会は、皆の顔が分かる小規模の大会よりも大きいけれども、大きすぎて結局自分の関連分野しか行かない(行けない)大規模な大会ほどではないために、どの講演も何らか関心をもって聞けるという絶妙な規模だと思います。それゆえ逆に、全体のバランスを見ながら運営する難しさがあり、どの対象の参加者に満足してもらうかが今後の運営として鍵になるかと思います。それとともに、大会企画委員会と実行委員会の負担も考えながら、どこかで「落としどころ」をつけないといけないこともあり、なかなかすっきりとした「正解」もありません。大会企画委員会は、その中で絶えずいろんな議論しています。昨年度実行委員会、本年度企画委員会に携わった身としていろんな立場で考えてみるのですが、悩みはつきません。

例えば,重要な議題は大会の総会において会員皆で議論を行ない決定されますが、個々の運用ルールについては常任委員会、もしくは企画委員会が決定しないといけないことも数多くあります。しかしながら、会員の皆様にとっては必ずしもこれらの決定に納得できないことがあるかも知れません。いままで重要な決定には「アンケート」を実施してご意見をいただいてきましたが、必ずしも一つ一つの決定についてアンケートをとって意見分布を見るのも難しいでしょう。これについては、松田会長から、会員の意見を聞く「目安箱」を設置し広くいろいろなご意見を募ろうという案が出ています。今後、このような「目安箱」を通していろんな意見を聞くことにより、運営側の労力負担を少しでも減らしながら、少しでもよい方向に大会が運営されることを祈っております。

現在、大会企画委員会では久米篤委員長のもと、広島大会への準備が進められています。総会での議論を受けて、将来計画委員会としっかり連携しながら、生態学会における「国際化」をどのように進めるべきかという議論が行なわれています。また、実行委員会と連携しながら、大会会場の諸事情に応じた運営案が議論されています。大会企画委員会と大会実行委員会にとっては、一つの大会の終了が次の大会の「スタート」になり、絶えず大会のことを考える一年が始まります。大会がこのようなボランティアによって開催されていることをご理解いただいたうえで、参加者の皆さんは一年に一回の大会を楽しんでいただき、共に今後の生態学会の発展に寄与していただきたいと思っています。


*以下に、ポスター賞の審査をしてくださった皆さんのお名前を記して、あらためてお礼申し上げたいと思います。ありがとうございました。

相川真一、相川高信、赤坂宗光、天野達也、綾部慈子、安藤元一、飯尾淳弘、飯島勇人、池田紘士、石川尚人、石田真也、石田弘明、石田裕子、石塚航、石原孝、井田崇、伊藤洋、伊東宏樹、井上智美、井上みずき、今田省吾、岩渕翼、上田昇平、上野裕介、内井喜美子、江成広斗、大河原恭祐、太田藍乃、大塚俊之、岡田浩明、岡本朋子、奥田武弘、奥田昇、小野田雄介、片山昇、兼子伸吾、鎌倉真依、亀井幹夫、香山雅純、河井崇、川口利奈、工藤洋、栗和田隆、黒川紘子、郡麻里、古賀庸憲、小林知里、小林元、小林慶子、小林真、小林誠、小山明日香、近藤洋史、今博計、齋藤隆実、斎藤昌幸、佐藤喜和、酒井聡樹、坂本正樹、崎尾均、佐藤重穂、塩尻かおり、塩寺さとみ、須賀丈、杉浦秀樹、鈴木亮、鈴木俊貴、鈴木紀之、関剛、高木俊、高倉耕一、高嶋敦史、高梨聡、高橋明子、高橋大輔、高橋佑磨、高原輝彦、立石麻紀子、田中嘉成、田邊優貴子、玉木一郎、辻かおる、辻野昌広、辻大和、土屋香織、直江将司、仲澤剛史、中丸麻由子、西原昇吾、西村欣也、西脇亜也、新田梢、橋本啓史、長谷川元洋、畑啓生、原慶太郎、原野智広、比嘉基紀、日室千尋、深澤遊、福島慶太郎、藤林恵、星崎和彦、牧野崇司、松田陽介、三浦収、三木直子、道前洋史、南佳典、三宅崇、持田浩治、森さやか、森口紗千子、森田健太郎、森豊彦、山下聡、山本俊昭、横井智之、横川昌史、吉川徹朗、吉原佑、米倉竜次、米谷衣代、若松伸彦、和田哲、渡邉修 (敬称は略させていただきました。また、このほか11名の方が匿名を希望されました。)

*また、以下に今年度から正式に部会化された高校生ポスター賞の審査をしてくださった皆さんのお名前を記して、あらためてお礼申し上げたいと思います。ありがとうございました。

西脇亜也、山村靖夫、広瀬祐司、平山大輔、丑丸敦史、嶋田正和、山浦悠一、亀田 佳代子、山下雅幸、中井咲織、浅見崇比呂、宮崎祐子、山尾僚、源利文、東樹宏和、片山昇 (敬称は略させていただきました。)