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会長からのメッセージ −その2−

「学会誌のこれから」

 日本生態学会では、Ecological Research,日本生態学会誌、保全生態学研究の3誌を発行しています。
 3誌とも現在立派な編集委員長がおられて(巌佐さん、大串さん、湯本さん)、それぞれしっかりした編集方針のもと、着実に発行されています。任期は3年であり、まだ任期なかば(湯本さんは交代されたところ)ではありますが、次の編集委員長を決めておかなければなりません。今回は日本生態学会誌の編集委員長の話です。大串現編集委員長は、一部の書きたい人が書く雑誌から、「読者が読みたいと思う雑誌」への転換を公約され、その通りに実行されつつあります。最近号の誌面をみていただければ、その内容の変化と充実ぶりを理解していただけると思います。ただ現委員長は、3年間はその方針でやるけれども、その後はこの方針を引き継いでもらう必要はない。新しい人が自分のアイデアを生かして新しいことをやればよいというお考えです。さて、どなたに引き受けていただければよろしいか
 「思い切って公募にしたらどうか」
というのが、先日の常任委員会で出た意見です。
 「そりゃ面白い、やってみよう」
というのが、お調子者会長の意見でしたが、あまり調子に乗って勢いだけできめてしまうのもどうかということで、なにかデメリットがあるかどうか、次回の会議まで考えておこう、ということになっています。

 すぐに考えられそうなことは、「をかしな」人が名乗り出て、自分自身の「とんでも学説」のようなものを展開するために雑誌を利用してしまうのではないか?というような危惧です。まあ、公募に名乗り出ようかというような人は、多少とも酔狂な人であるに違いないし、編集者の個性が雑誌に反映されるのもまた当然のことではあろうと思われるのですが。しかしあまりにも非科学的な議論がまかり通ったりすると、生態学会の信用にもかかわる事態にもなりかねません。そういうことを防ぐには、プロポーザルを出していただいて、常任委員会の責任で審査する、中間レビューを行うなどの方策が必要でしょう。それよりも公募に応じていただけるような、若い人が出てきていただけるだろうか?そちらのほうを心配したほうがよいのかもしれません。

 日本生態学会誌をどのような雑誌にしたいか、ということについても議論をしています。会員だけでなく一般の人にも開かれた雑誌、書店でも売れるような雑誌を目指したらどうか、という意見が出ています。そのような雑誌を目指すには、保全誌のほうがむしろ適当かもしれません。書店に並べるには、今のままではまだまだ難しいと思われます。科学的レベルを落とさずに、しかも解りやすく、読みやすくする。相当困難な課題ですが、チャレンジしがいのある課題ではないでしょうか。このチャレンジは単なる一般社会へのサービスではなくて、自分にも見返りの多い仕事になるはずです。(2006.6.13)