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会長からのメッセージ −その11−

「近況報告その3」

 来週は生態学会事務局もお盆休みということで、メッセージは今週中に更新せよとの事務局長からの命である。メッセージも夏休みをとろうかと思ったが、夏休みは来週ということにしていただいて、

 今度は研究の話です。先にも書きましたように、教育以外にも、研究にも力を入れるようにということです。学長は研究活性化のために、競争的研究費というのもいくつか設けておられ、それにも応募するように。応募しないのは、ヤル気がないということである。それで私も今年は応募したのだが・・実は、二つ応募したテーマが二つとも通ってしまったので、頑張って研究もやらなければならないという状況に追い込まれています。

 研究といっても、一人で細々とやらねばならんので、昔からやってきた樹木の葉のフェノロジーの問題を光合成生産との関係で見直していくという仕事になる。これについては、京都大学退職前に結構面白いことを思いついたので、それを論文にする努力から始めた。共同研究者のL教授と共著の論文を去年投稿し、今年なんとか受理された。今、現在はAmerican Naturalist誌の、近い内に出る論文リストというのに載っています。この論文は一言でいうと、1枚の葉の生涯光合成量と森林の落葉量を掛け合わせると、森林の1年間の光合成生産量(GPP)が求められるというもので、自分では画期的だと思っているわけだが。

 では、1枚の葉が生涯に光合成で稼ぐ量をどうやって求めたらよいのか?1枚の葉の量で大丈夫なのか?などの疑問が浮かぶはずである。もちろん、わずか1枚だけ調べればよいと言っているわけではなく、何枚もしらべて平均するということになるわけだが、基本的には1枚の葉を、生まれてから死ぬまで追跡して、その稼ぎを調べればそれでよろしいということである。そのバックグランドにあるのは、1枚の葉はその生涯に結構色々な環境条件を体験するから、というものである。葉は生まれた場所から移動するわけではないが、植物が生長するにつれて、周囲の環境が変化し、あたかも自分が動き回ったように見える。ということで、これを葉群エルゴード仮説と称している。エルゴード性というのは千葉大学の梅木さんに教えていただいたもの。どうやって求めるかに付いては、光合成速度の日変化、季節変化を求めて、平均労働時間を出すなどの仕事の他に、葉の内部構造から、細胞レベル、分子レベルからなにかが出ないかと考えています。これはK先生、E先生との共同研究です。学科はちがうのですが、同じ大学の遊び仲間です。

 ところで、1枚の葉の生涯に渡るパーフォーマンスという概念は、光合成速度だけでなくとも、他のことにも適用できるということに気づいてきた。1アイデア100真似というわけだな(真似というのは人まねでなくて、自分のを真似るということで、昔大野乾という人の本で読んだことがある)。たとえば、葉の生涯蒸散量とか、呼吸量とか。蒸散量のほうは、同じ学科のM先生と共同のプロジェクトで進めている。

▲挿し絵は能登半島の内懐側の七尾湾の遠望。去年(05年)の春に、輪島まで行った帰りのスケッチです。