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会長からのメッセージ −その36−

「総会」

 54回大会が近づいて参りました。皆様発表の準備でお忙しいでしょうか。こんな駄文にお付き合いいただいている方は、すでに準備を終えられた方か、それとも忙しくて仕方ないんだけどお付き合いいただいているという方もおられるでしょうか。

 大会の参加者は1500人を超えるのに、総会の出席者は150人を超えることはない。それどころか、大概の場合は100人以下であり、広い会場にパラパラ何人かが座っておられるばかりである。後ろに受賞講演会などがあると少し増えるが、それにしても少ない。全会員数の5%以下の出席者で、学会の最高の意志決定機関などと言えるのか。「およそ会員たるもの、総会に出席すべきである」「不満があるなら、総会に出席して意見を述べるべきである」これらは全く正しい意見である。正論である。ということは正しいけれども実行されない意見である。多くの方は、総会の時間に、温泉を探訪したり、市内観光したり、近いフィールドを見学したりされるのだろう。私はそれでよいのだと思う。

 逆に言えば、それはある程度執行部が「信頼」されていることだと思う。そんなに自惚れてはいけないと言われるかもしれないが、あくまで「 」付きの信頼である。つまり「決まり切ったことをルーティンで処理する程度のことは監視していなくてもなんとかやるだろう」という程度には「信頼」されているのだと思っている。したがって、何か重要な事案、ルーティンで処理してはいけないような事柄が生じたときは、大勢の会員が総会に出席され、意見を述べられるのである。(1989年の釧路大会では、何百人という会員が出席し、意見が百出、沸騰した。「総会で面白かったのは釧路の大会ですよ」と、今でもイワサ元会長がおっしゃるのがそれである。しかし、それも昔のことになりつつある。)その意味で総会というのは「国民投票」のようなものだと思う。「憲法改正」などが問題になるときは、国民投票にかけなければならないという、あれですね。(このことは前に書いたような気もするが、30回を越えると、調べ直すのが面倒なので、もう1回書きます)。その「国民投票」制度を常時準備しているのが、わが生態学会の総会である。普段ガラガラなのは仕方がない。

 さて今回の総会ですが、新しく会員の承認を得なければならないのは、大島賞を実行すること、社団法人化に向けて進むことです。

 大島賞については2年ごしの懸案ですから今回は実行に向けて進みたいと思います。「こんな賞なら私は貰えそうにないから反対だ」という意見が有るかもしれないね。でもそういう意見は後ろ向きの意見のような気がする。同じなら、「私にも貰える賞を作って!」と言っていただいたほうがよいかもしれない。そういう意見が出たらどうするって。お任せ下さい。私の預金通帳の数字がもう少し増えるまでお待ちを。

 法人化のほうは、「生態学会の歴史上の大転換」ともいうべきことだから、「国民投票」モノだと思うけど。果たして、後々の語りぐさになるほど大勢の会員の方々が詰めかけて、議案が流れ去ったりするのだろうか。事務局にとっては悪夢のような予想だが、それはそれで結構なことだと思う。もう一年かけて議論をやり直せばよい。しかしどうもそうはならないのじゃないか。実質的には「大転換」のカーブをかなり曲がってしまっていること、「おたくはまだ法人化していないんですか?」といわれるほど、他ではすすんでいて、「当たり前」のことになっていること、などの理由による。でもまあ、そんなに白けないで、みなさん総会にもご出席なさって下さい。

 では皆さん松山でお会いしましょう。現地実行委員会の柳沢会長、大森実行委員長はじめ皆様には大変お世話になりますがよろしくお願いします。大会事務局ではみなさん忙しく働いておられますが、そのなかで一人だけ、手持ちぶさたで、でも一人暇そうにしていては悪いと思って居心地悪そうにしている人間を見つけたら、それは間違いなく私ですから、遠慮なく声をお掛け下さい。

 前回書いた辻井先生の文章は正確には「シャーロックホームズの植物学」という題名で雑誌「北方林業」に連載中です。