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会長からのメッセージ −その44−

「EAFES3の報告 その2」

 前回の続きでEAFES3の報告です

 3日目 今日も朝8時過ぎから「指定席」に座って、プレナリー講演を聞くことにする。なかなか興味深い講演があって、地球環境問題にとっては人口増加もさることながら、householdの増加こそ問題であるという講演など、簡単な話なのに、なぜ今まで気づかなかったのだろうと思うような面白いものだった。Householdはこの場合世帯とでも訳すのが適当であろうか。1戸を構えると言う意味で1戸と訳してもよいかもしれない。エネルギー消費の単位は、個人である場合も多いが、家が主体であることのほうが多い。一家を構えるとそこに何人住んでいようと同じ程度のエネルギーが必要となるからだ。それで世帯数の増加だが、人口増以上に増加している。それは日本でも核家族化などで理解しやすい話だが、中国でもアメリカでもコロンビアでも同じで、グローバルな傾向である。逆に、世帯あたりの人数は減っている。子供の数は減っている上に離婚率が上がっていることも原因だという。世帯を単位にした個体群生態学みたいなことが展開されるわけで、視点を新しく獲得すると、ずいぶん新しい議論が展開出来るという例だと思う。ただしデータの得易さは人口統計ほど簡単ではないらしい。

 昨日の話の続きになるが、できるだけ東アジアの人たちと話そうということを思い出したので、コーヒーブレークには、どう見ても東アジアという顔立ちで、色も白からず、背も高からずという人に目をつけて話しかけてみた。どこからおいでになりましたか?というと、これがはずれでUSAだということ。でも面白かったのはエコロジストではなくて、シビルエンジニアリングが専門だという。エコロジカルエンジニアリングなどと言っているが、我々の分野でも昔から、エンバイロメンタルエンジニアリングというのがあるんだ。ということを言っておられて、会話はそれなりにはずんだのであった。

 午後からはEAFESのシンポジウムで梅木さん主催の東アジアの森林生態系という会場に出席。同時間帯に中静さん主催と、小泉さん主催の森林に関するシンポジウムが並行していてですね、これはどういうつもりだろう、森林だから皆同じ時間帯に並べてしまえということか、あまりよいプログラム作りとはいえないようだ。EAFESのシンポジウムはいつもの如く出足が悪く、申し込みが少なかったので、梅木さんには無理を言って、一つシンポジウム作って頂いたという経緯がある。それでオープニングリマークスをごく簡単にしゃべらして頂いた。

 4日目 今日は8時から、エコサミット主催で、各国会長などの朝食会がある。これは日本に居るときから案内を受けていた。昼過ぎからは自分自身のオーラル発表がある。まずプレゼンテーションの会場にいって、自分の発表のパワーポイントをマウントして貰おうと思ったが、誰もいない。あきらめて帰ろうかと思った頃に係りの人がきたのでお願いする。これで安心。会場の外には紙に印刷したプログラムが貼ってあり、それには僕のタイトルも出ている。昼過ぎだ。でもキャンセルがあると早まるから、少し早く来いという。

 朝食会にいってみるとアメリカの会長のアランとか、インテコルのジョンとかが既に来ている。ジョンからはインテコルの運営委員会にも出席してくれと言われる。それはこの会場で、この会議終了後にあるのだという。ウーム、僕の発表はどうなるのか。今日も長い1日になるのだろうか?

 朝食会というのはちゃんとしたサービスがなされるのかと勝手に考えていたら(モントリオールではそうだった)、そうじゃなくて、いつもコーヒーブレークのときにお茶とお菓子を勝手に取って食べるそれと同じようなのが並べてあるだけであった。自己紹介と後は、エコサミットのスポンサーのこと、そして、プレスリリースに流す文章に関することだった。これは誰に向かって発するのか、ポリシーメーカーに対するものか、それならば少しインパクトが足りず、しかも長い。短くインパクトのあるものがよい。アカデミズムに向かってのものなら、もっと長くしたほうが良いというようなのが、大方の意見であった。インテコルの会議は、財源問題が主であった。インテコルというと各国生態学会の上部に君臨する強力な大組織をイメージするが、実際はそうじゃなくて、全体の上のアンブレラ型組織であり、独自の事務所もなく、事務員がいるわけでもない。財政は個人会費と国別の会費に支えられているが、苦しい。個人会費は徴収がけっこう大変で、銀行に取られてしまうほうが多い。結局日本など主な国の国別会費で支えられている。国別会費は一人当たり、0.5ドルということでこれを人数分支払う。日本生態学会の場合は、まとめて20数万を支払っている。これを一人頭、1ドルに値上げして欲しいという要望は去年から来ている。個人の会費であるとして考えてみると、この値は破格に安いから、値上げには応じたいが、なぜ、今その額が必要なのかを明らかにして欲しいというのが、私たちの希望で、今、そこんところで止まっている状態にある。(実はこの点について質問してみた。会計報告はあるのかと聞いたところ、インテコルのウェブで公開しているということでした。帰ってから調べていただいたら、まだ公開されていない、2週間ほど待ってくれという。事務員がいるわけではないからそんなにてきぱきとは進まないんだということでした。)次のインテコルは第10回に当たり、これはもう2年後(2009)年に迫っている。オーストラリアのブリスベンで8月16日から開催予定です。シンポジウムなどを企画したい人は、今年の12月までに申し込んで欲しいということでした。

 それが終わって、自分の発表会場へ飛び込んだ。ちょうど前の人が話し始めたところで、よいタイミングであった。そもそも僕のはプログラムにも載っていないのだからとあまり期待もせずに、しかしせっかく話すのだから、皆さんに理解していただけるようにということで、それなりに頑張って話しました。予期に反してずいぶん多くの人が、質問をしたり、終わってから、質問や意見を言いに来てくれた。また何人かの人が連絡先を教えてくれ言って来た。ビジネスの会議よりは、自分でプレゼンするほうが僕にとってはずっと充実感がある。ただし僕は今のところ、会長であり、こういうところへ出てくると、日本生態学会を代表しているような顔をする必要がある。自分の充実感だけを求めるというわけにはいかない。早く、充実した発表をするということだけを考えたいが、もう、そういった時は戻ってこないのかもしれない。

アミガサタケ 実習に行ったときに採集して描きました。食用にするか描くかはいつも迷うところです。