5月10日に,環境省から生物多様性総合評価が発表されました。これは,最近50年間に日本の生物多様性の状況がどのように変化したかを評価したもので,生物多様性条約事務局がおこなうGlobal Biodiversity Outlook (GBO) の日本版ともいうべき報告書で,通称JBOとも呼んでいます。5月10日には国連大学で,GBO3の紹介と一緒に,JBOのお披露目もさせていただきました。
この報告書は,私が座長を務めさせてもらいましたが,生態学会前会長の矢原徹一さんや,前々会長の鷲谷いづみさん,次期会長の松田裕之さんをはじめ,加藤真さん,三浦慎悟さん,中村太士さん,竹中明夫さんなど委員の全員が生態学会員という構成でまとめられたものです。また,昨年の盛岡大会,今年の東京大会ではシンポジウムで途中経過を発表させてもらい,学会員の方からも有益な示唆をたくさんいただきました。
生物多様性の現状を考えるとき,一般のひとたちがまだ生物多様性のことを知らないということが最も大きな問題です。この報告書は,現状を把握するということのほかに,多くの方に生物多様性を保全したり持続的に利用したりという具体的な行動を起こしてもらいたい,そのための資料として使ってほしいという目的があります。そのため,細部の問題点をあえて丸めて,わかりやすくした部分もあります。日本では,今回初めてのことでしたので,私たちとしても十分に満足できる内容ではありませんし,委員の間で意見が割れた評価もありました。一方で,この作業を通じて問題点も明らかになりました。とにかく,最初の形はできたので,これをもとに次回の総合評価JBO2をより充実したものにする,あるいは究極の目的である生物多様性の保全と持続的利用への貢献ができるような形へと近づけたいものだと思います。
報告書は以下のサイトでダウンロードできます。ぜひ一度ご覧ください。
http://www.biodic.go.jp/biodiversity/jbo/jbo/index.html
また,これまでのご協力に感謝します。
中静 透