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会長からのメッセージ −その5−

生物多様性条約第10回締約国会議

 いわゆるCBD COP10です。10月11日から「バイオセイフティに関するカルタヘナ議定書」の第5回締約国会議(MOP5),それに続いて10月18日から29日までが,COP10 で,名古屋の国際会議場で行われました。会議登録者数で1万7000人,ブースなどが設置された生物多様性フェアには延べ12万人が参加したということです。

 すでに新聞などでご存知の方も多いと思いますが,最終日(というより翌朝3時)まで粘り強い会議が行われた結果,ABS(遺伝資源へのアクセスと利益配分)に関する議定書(名古屋議定書)と,2010年以降の戦略目標(あいち目標)が採択されました。私自身は,20日から29日までオブザーバーとして参加し,いくつかのサイドイベントでプレゼンをしたり,パネルに参加したりしていましたが,最終日の全体会議半ばで埼玉の自宅までもどりました。実は,議定書も目標も,議論が割れて難航しており,途中では,『今回はまとまらないかも』という噂が何度も出ていました。最終日の全体会議は午後3時から6時までということだったのですが,午後4時30ころにはじまり,6時に中断,ワーキンググループでの議論が続けられ,11時ごろから再開,最終的に終わったのが朝3時だったというわけです。6時に会場を離れた私が埼玉に着いて,インターネットで見ると,まだ全体会議が再開されていない,という状況で,再開されたあとの様子をインターネットで3時まで見ていました。採決が決まった時には参加者が全員立ち上がって大きな拍手が起こり,ちょっと感動的でした。

 合意に達するまでの参加者の粘り強さには頭が下がりました。環境省の関係者も,徹夜に近い状態が何日も続いていたようですが,各国の参加者の,なんとかまとめようという熱意もすごかったと思います。こうした努力の結果,議定書や目標が成立したことは素直に喜びたいと思います。

 内容については詳しく書きませんが,まだいろいろな問題点が残っているのは確かです。また,こうした問題のほかにも,IPBES(気候変動のIPCCのような,生物多様性と生態系サービスに関する政府間のプラットフォーム)のことや,保全や持続的利用に関する資金供与,あるいは資金メカニズム,里山イニシャティブなどいろいろな話が議論されました。革新的資金メカニズムについては,TEEB(生態系サービスと生物多様性の経済評価)の最終報告書などが出たこともあって,どのくらい進むのか注目されていたのですが,正式文書としては採択されませんでした。その他は,一応の枠組みができたのですが,具体的にどのように進めていくのかについては,今後の大きな問題だと思います。

 生態学会や研究者グループとしては,国際的な生物多様性研究計画(DIVERSITAS)や,環境省などのチャンネルから,「あいち目標」の原案に対していろいろ意見を出してきたところです。それがどのくらい活かされたのか,今後きちんと検証すべきですが,このように各国の対立する利害を調整するという場のなかでは,必ずしも科学的な議論が行われたとはいえないのではないかと思います。IPBESもできることですし,今後どのような形で私たちの科学的知見や提言を活かしていけるのか,あらためて考える必要を感じました。

 自然保護委員会,生態系管理委員会のみなさんを中心に,生態学会のブースを出してもらい,生態学会がこれまでやってきたこともアピールしました。多くの人が覗いてくれましたし,3月に意見書を出した上関原発のことは,世界のNGOの声明にも取り上げられ,注目されたと思います。ただ,会場の構造上,ブースを訪れる外国人が少なかったというのは残念でした。ポスターや配布資料を準備していただいた両委員会のみなさま,ありがとうございました。雨の日もありましたし,風が強く寒い日もあり,そんな悪天候にもめげず,ブースで解説をしていただいた方々にお礼申し上げます。

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