日本生態学会

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会長からのメッセージ -その2-

「ESJ68岡山大会について」

日本生態学会会員のみなさまへ

 国内の新型コロナウイルス感染は沈静化しつつあるという観測で、全国の緊急事態宣言が解除されました。しかしながら、このまま沈静化するという楽観的な予想は少なく、つぎの感染拡大に備えるべきだというのは専門家の一致した見方です。このため、今後もかなり長期にわたって、3密を避けるなど「新しい生活様式」をとり入れることが提案されています。

 日本生態学会では、昨年度の名古屋大会のオンサイト(現地)開催を中止し、代議員会、総会、受賞講演の一部のみをオンライン開催するという、苦渋の選択をおこないました。3月初旬のことで、まだ政府や自治体の方針も定まらず、また他学会の動向も不明なままで決断したわけですが、結果的には賢明な選択であったと考えています。しかしながら、会員のみなさまには、会員相互でディスカッションをおこなう最大の交流の場を提供できなかったということに関して、学会執行部として忸怩たる想いがあります。

 すでにニュースレターでお知らせしたように、今年度に予定しているESJ68岡山大会はオンライン開催という方向で進めることにしました。以下にその経緯を少し詳しく説明いたします。

 まず、学会執行部としては2年連続で大会を中止することは絶対に避けたいため、「ESJ68運営検討タスクフォース」(以下、タスクフォースとよぶ)を立ち上げることにし、理事会の確認をいただきました。日本生態学会の大会開催は、都道府県をまたがる2000名以上の移動を伴い、しかも大会自体が3密の状態を生みやすいという感染拡大リスクの高いイベントであることから、非常時に備えてオンライン開催の可能性を探る必要に迫られたからです。

 タスクフォースは、1)非常事態下でのESJ68岡山大会開催を実現するため、大会企画委員会および大会実行委員会の主要メンバーと学会執行部、大会担当理事、事務局からなるチームとして編成する、2)ESJ68岡山大会の開催実現に必要な論点整理をおこなうことを当面のミッションとする、3)ESJ68岡山大会の実施計画について理事会に報告し、大会運営に関して必要な事項の議論および決議に供する、というものです。

 去る5月14日と5月30日にタスクフォース会議をオンラインでおこなって、以下の方針を決めました。

  1. 現時点をもって、大会準備を全面的なオンライン開催に切り替える。大きな理由は、オンサイト開催とオンライン開催の両方、あるいはその両方の要素をもつハイブリッド大会を準備するには、企画委員会・実行委員会ともに心理的にも実務的にも過大な負担を強いることになるため、また開催費用の大幅な増加が予想されるためである。ただし、岡山大会というオンサイトの要素を残すかどうかについては、継続的に議論する。
  2. 一般講演(口頭発表・ポスター発表)、シンポジウム、自由集会、フォーラムなどの従来のセッションに関しては、将来オンサイト開催ができることを見越して、枠組みを崩さずにおこなう。それぞれのセッションの趣旨を損なわず、さらにオンラインならではのメリットも活かしながら、デメリットを最小限にするように、現状での最適なツールの選択も含めて企画委員会と連携して検討する。その際、それぞれの発表形式ごとに、動画配信の必要性の有無や、ライブ(同時)配信とオンデマンド(異時)配信双方の可能性を視野に入れて検討する。
  3. 各発表賞については、審査の公平性を担保することと審査員の負担が過重にならないことをオンライン開催でどのように実現するかを、中止の可能性も含めて企画委員会を中心に検討する。
  4. 企業展示、高校生ポスター(あるいはより広く高校生による発表コンテスト)、公開講演会、懇親会などについては、オンラインでどのような発展的な可能性があるか、企画委員会および実行委員会が連携して検討する。またエコカップなどの連携企画については、斬新なアイデアを広く募集する。
  5. 参加費については、オンライン開催で削れる費用と増える費用を算定し、会員のみなさまに納得して参加いただけるように最大限の努力をする。

 来年3月に、現時点での判断が「取り越し苦労だったな」「オンサイトでもできたのに」と言われるのは、むしろ社会的には望ましいことだと思います。しかし、ポスト・コロナ禍では、産業界や教育界でもこれを契機にさまざまな社会革新が起こることが期待されています。今後、オンサイト開催できるような社会情勢になっても、部分的にはオンラインのメリットを最大限に活かす大会運営あるいは学会運営が求められます。

 今回の大会は、近い将来の社会革新を見据えた大会のあり方について、オンライン形式の可能性をできるだけ追求し、日本生態学会にノウハウを蓄積するための好機であるとポジティブにとらえています。会員のみなさまにもご理解をいただき、今後ともご支援・ご協力を賜りますよう、心よりお願い申し上げます。

 オンライン開催というと代替手段あるいはプランBのようで、つい後ろ向きの発想になりがちですが、未来志向の新しいかたちの学会大会を創るために、みなさまの積極的なコミットメントに期待しています。

2020年6月3日 会長 湯本 貴和

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