| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(口頭発表) A1-08

市民参加による干潟底生動物の調査 1.継続性のある調査手法

*鈴木孝男(東北大院・生命科学),佐々木美貴(日本国際湿地保全連合)

干潟は、生物生産性が高く、シギ・チドリ類のような渡り鳥にとっては、採餌や休息の場として重要である。さらに、干潟は有機汚濁物質を分解し高い水質保全機能を有している場でもある。こうした機能は、そこに棲息する多様な生物による食物連鎖によって支えられており、特に底生動物は、種多様性や現存量の点からみて、大きな役割を果たしている。このため、干潟で鳥類の調査をしているグループや保護団体から、干潟底生動物の実態を調べたいという声が上がっている。しかしながら、底生動物として干潟に出現する分類群は多岐に渡り、調査手法も、対象とする分類群や研究者間で異なるなどの理由から、専門家が関わらないと、実際の調査ができないのが実情である。

そこで、市民が自らの手で、身近にある干潟に棲息する底生動物群集を調査できる手法の構築を目指して、調査未経験者に参加していただき、数回の試行調査を行った。その結果、ある程度再現性があり、将来の変化をモニタリングできる継続性のある手法として、以下の手順が考えられる。

1.現場において、1人の探索範囲を50m四方程度とし、8人で調査を行う。

2.はじめに、底土表層に棲息する底生動物を15分間探索しながら採集する。

3.次に、小型スコップ等を用いて15回の掘返しを行い、出現した底生動物を採集する。

ただし、本試行調査においては、採集した底生動物の同定は専門家が行った。このため、市民が専門家の助力を得ずに現場で底生動物の同定を行うことに関しては、対象とする分類群の絞り込みを含めて、今後の課題である。

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