| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(口頭発表) A1-10

小富士海岸におけるカブトガニ生息環境の保全と創出

*大平裕(福岡県温防セ),柴田幸次(九環協)

Abstract: カブトガニ Tachypleus tridentatus の生息地は,福岡県志摩町の小富士海岸,北部九州および瀬戸内海の一部に限られる.西田・小池(2006)によると,カブトガニ個体群の遺伝組成は,小富士海岸が位置する加布里湾を境に,長崎や佐賀などの西側と北九州や大分などの東側では異なることが示唆されている.西側に属する本生息地は縄文海進期には東側に属する今津湾と連絡していたと考えられ,カブトガニの集団史を解明するためにも重要な個体群である.しかしながら,県道改築に伴い小富士海岸のカブトガニ産卵地の主要部分が消滅することが判った.

福岡県は,学識者らとミティゲーションを検討し,モニタリングと生息環境の保全対策を行った.モニタリングは平成12年度から開始し,現在も継続している.保全対策として,13年度に代替地となる産卵実験場を整備した.19年度には工事で消滅した砂浜とほぼ同位置に産卵場を整備した.

1)産卵実験場で確認されたつがい数は経年的に増加傾向にあり,19年度では15つがいであった.2)加布里湾内で確認された卵塊数は37−124塊で年変動が見られる.産卵実験場に集中する傾向がある.3)加布里湾内で確認された幼生個体数は増加傾向にあり,産卵実験場周辺干潟の増加が著しい.

道路工事で失われた小富士海岸のカブトガニ生息環境は,産卵実験場の整備によって影響が緩和され,新たに整備された産卵場により向上すると思われる.

Keywords: カブトガニ;北部九州;集団史;ミティゲーション

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