| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(口頭発表) A1-13

琵琶湖におけるニゴロブナの農業水路への遡上要因の検討

*水野敏明(琵琶湖博物館),前畑政善(琵琶湖博物館), 小川雅広(琵琶湖博物館),舟尾俊範(滋賀県立大学)

ニゴロブナは、琵琶湖の環境に適応して進化してきた固有亜種であり、生息数が激減していている絶滅危惧種である。そのため、その生態を解明するのことが緊急の課題となっている。本研究では、産卵場所としての水田地帯に着目し、琵琶湖から水田までの移動経路としての農業水路の環境条件に着目して、ニゴロブナが遡上する水路の選択要因の解明を目的として研究を行った。調査は、滋賀県草津市下笠地区の琵琶湖湖畔から集落までつづく幹線排水路(流路延長約1.5Km)を共有する小排水路7路線およびこれらの小排水路より上手に位置する幹線排水路2支線において、モンドリによる遡上魚類の捕獲調査等を実施した。調査期間は、5月上旬から7月末(一部は6月末)とした。調査は、各支線水路にもんどりをしかけて、ほぼ毎日17時から19時の間に遡上する魚類等のチェックを行った。調査の結果、降雨があるとニゴロブナ親魚が遡上することが確認された。遡上距離は、小水路の中でも特に湖岸から1km付近の水路に多く遡上する傾向が見られた。遡上経路選択の環境要因については、水深,流量が強く関係している可能性があることが明らかとなった。さらに、小水路の集水農地面積の大きさと遡上数については、相関係数が0.74となり農地から流出する水の化学的な組成などもなんらかの選択要因になっている可能性があることが示唆された。こうした遡上選択の差異が生じた理由についてのさらなる精査が今後の課題と考えられる。

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