| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(口頭発表) A1-14

オオサンショウウオの移動特性を考慮した河川改修の時期

*田口勇輝(京大院・地球環境/兵庫県博),夏原由博(京大院・地球環境),三橋弘宗(兵庫県立大/兵庫県博)

オオサンショウウオの移動については,断片的な記載はあるものの,その様式に関して解析した研究報告はない.移動の様式を明らかにすることは繁殖生態や資源利用などを解明する上で重要であり,生息地の保全を考える上でも不可欠である.本研究は,再捕獲法を用い年間を通じた調査から,本種の移動様式とそれに影響を与える環境要因について取り組んだ.

調査は兵庫県篠山市を流れる武庫川水系羽束川で行った.2004年7月8日から05年12月29日まで毎月4〜8,計90夜踏査し,マイクロチップを用い個体識別をした.調査区間は1523mである.本種の移動に影響を与える要因を明らかにするため,一般化加法モデルを用いて移動距離と環境要因との関係を解析した.環境要因には,本種の移動に影響を与えると考えられる4つの変数,捕獲時期・個体の全長・捕獲位置の堰からの距離・捕獲間隔を用いた.

その結果,時期による影響のみが移動距離に対して有意な説明変数となり,移動距離は個体の全長,堰による移動の阻害,捕獲の偶然性に影響されていないことが明らかとなった.さらに本種は5〜8月に上流へ移動する傾向にあり,7月にそのピークを迎えることが平滑化曲線によって示された.また,9〜10月にかけては降下する傾向にあった.

以上の結果により,本種は個体サイズや障害物の有無に関わらず,季節的なシグナルに反応して移動を行うことが推測される.それは,繁殖期の前後に対応して行われていることから,繁殖行動との関係が示唆された.この時期に河川改修を行う場合は,工事区間への進入に留意し,個体を工事区間外へ移動させるといった対策が有効と思う.

日本生態学会