| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(口頭発表) A2-02

竹林の拡大特性とそれに基づく持続可能な管理手法の開発

*鈴木重雄(広島大・院・国際協力)

近年,隣接する二次林や竹林そのものの利用が減少したことにより,竹林の拡大が進行している.竹林の拡大は里山の景観や生態系に影響を与えると同時に,防災上,農地保全面上の問題もはらんでいる.一方で,タケは日本文化の中に溶け込んでおり,近年では新たな利用方法も開発され,二酸化炭素の吸着源としても期待されている.このため,タケの生態的な特性を反映して,竹林の利用と駆逐の両面を視野に入れた管理計画の確立することが必要である.そこで,竹林の拡大特性を明らかにしたうえで,それらをふまえた持続可能な竹林の管理手法の検討をおこなった.

この結果,タケの侵入稈が侵入先の林冠を突破しやすい植生高の低い植生で竹林の拡大が起こりやすく,遷移途上の植生での竹林化の進行によって,より生物多様性が喪失しやすかった.また,急傾斜地やアクセスの難しい竹林において管理放棄が進みやすいことが明らかとなった.これらをふまえて,竹林の拡大リスクを隣接する植生から,管理の作業性を竹林へのアクセス性などから判断して竹林を,駆逐竹林,早期駆逐竹林,持続的利用竹林,非利用竹林に分類した.駆逐竹林と早期駆逐竹林は,拡大リスクが大きいことから駆逐を目標とし,持続的利用竹林は,拡大リスクが比較的小さく,人間による管理も容易な場所に位置しているもので,今後の資源生産竹林としての活用も考えられるべきである.竹林の駆逐を目的とする場合,地上部の伐採のみでは,その後の管理を怠ると数年間でモウソウチク林が回復するので,そのことに留意をして計画的な駆除をおこなうべきである.資源生産竹林として管理する場合でも,間伐による伐採を基本にして伝統的なタケノコ生産林と同程度の密度を維持し,作業性を高めると同時に,林床の種多様性や景観の維持を図るべきである.

日本生態学会