| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(口頭発表) A2-04

都市近郊におけるノウサギの生息適地を現在と過去の森林ランドスケープから予測する

*斎藤昌幸,小池文人(横国大・環境情報)

過去のランドスケープが現在の生物の分布を決めていることが,伝統的な2次草原における植物群集などで明らかになってきている.しかし,哺乳類では過去のランドスケープの現在の種の分布への影響はあまり検証されていない.そこで,本研究では都市化が進行して最近数十年間のランドスケープの変化が著しい多摩丘陵において,1974年及び1984年,1994年の地被情報をもとに現在のノウサギの分布にとって重要な年代を探し,またノウサギの分布に影響を与える環境要因を検討することを目的とした.

2006〜2007年にかけて,多摩丘陵にある森林パッチ62ヶ所で,糞によるノウサギの在・不在調査を行った.これらの調査地点において,各年代の森林パッチ面積,森林連結性(connectivity)と周辺の土地利用面積(森林,宅地,農地)を算出し,環境要因とした.ノウサギの在・不在を目的変数,各年代の環境要因を説明変数として,一般化線形モデルによるロジスティック回帰を行い,どの年代のどの環境要因を含むモデルの予測力が高いかを比較した.

現在のノウサギの分布を最も良く予測できたのは,最も現在に近い1994年のランドスケープであり,ノウサギは過去のランドスケープの影響をあまり受けないと考えられた.また,環境要因としては,森林パッチ面積とconnectivityが特に重要である可能性が示唆され,周辺の土地利用面積(農地)はあまり重要ではないと考えられた.

日本生態学会