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一般講演(口頭発表) A2-08
希少種であるオオタカの保全は、開発事業に際して行われる環境アセスの中で主に行われてきた。しかし、この方法で保全の対象となるのは多くてもオオタカ数つがいであり、個体群全体が保全の対象とはならない。オオタカ個体群の存続を図るには、このような個体を対象とした保全から、個体群を対象とした保全への転換が必要である。オオタカの個体群を保全するためには、個体群が存続可能な面積の保護区を設定することが重要である。我々は関東と北海道全域のオオタカの営巣数を予測する生息環境モデルを作成した。このモデルを用いて、営巣数の多いメッシュから順にIUCNの絶滅危惧基準(500つがい)を含むまでメッシュを抽出した結果、関東では120メッシュ、北海道では215メッシュが抽出された。これらのメッシュを保護区とした場合、保護区の面積は最小ですむが、メッシュが平野部に位置したためオオタカの保全と他の土地利用が強く競合することが予想された。一方、既存の自然保護区に含まれるメッシュには関東と北海道あわせて100つがいしかオオタカは生息していなかった。これに国有林に含まれるメッシュを加えても生息数は150つがいであり、500つがいに満たなかった。メッシュの半分以上が既存の保護区または国有林に含まれるメッシュには約700つがいが生息していたが、これらのメッシュは生息密度の低い山間部にあるため、保全に必要なメッシュ数は1,000に達した。さらに、山間部での繁殖率の低さを考慮するために個体群存続性分析を行った結果、成鳥の生存率や環境変動の大きさにもよるが、同一個体数が生息する保護区を平野部と山間部に設定した場合、絶滅確率は平野部よりも山間部の方が高くなり、絶滅確率を同等にするためには山間部の保護区に含まれる個体数を平野部の5倍以上に増やす必要があった。