| 要旨トップ | | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨 |
一般講演(口頭発表) A2-11
種多様性の評価基準として、生態学では全ての種を同等に扱うという観点で種多様度指数などが用いられることが多い。これに対し、保全生物学では希少価値や生態系機能の高い種に高いウェイトを与えたうえで種ごとの評価値を合算する方法を取ることが多い。本研究では、後者の立場から森林に生息する鳥類を対象に評価する客観的手法を事例地域へあてはめ、その結果を地域間で比較した。つぎに、客観的指標のみにもとづく評価の問題点を確認したうえで、主観的評価を取り入れた総合的な評価手法を紹介する。最後に総合的評価にもとづく結果を地域間で比較し、その有用性、問題点、今後の展開などについて考察した。まず、分布域の大きさと系統分類学的特異性をもとに鳥類の種の価値を評価する5つの客観的指標を作成し、一定地域で観察される種の集合体として多様性を評価することとした。分布域の大きさにもとづく種の評価値はレッドデータカテゴリーのランクと相関する傾向があったが、距離尺度であることや客観性が高いことから指標として有用である。また、分布域の大きさと系統分類学的特異性は互いに相関しないことから、双方を組み合わせた総合的な指標が必要である。これらの指標を用いていくつかの地域を評価したところ、地域間の評価順位は指標によって明らかに異なった。そこで、単一の基準で地域間が比較できるように、AHP法を援用して専門家の主観的判断にもとづくウェイト値を5つの指標について算出した。そして、ウェイト値を各指標にもとづく地域の評価値にそれぞれ積算する形で、地域ごとに総合的な評価値を導いた。その結果、種数は少ないが希少種の多い地域や種数と地域レベルの希少種が多い地域で評価値が高かった。