| 要旨トップ | | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨 |
一般講演(口頭発表) A2-12
侵略的外来種が生態系に与える顕著な例である在来鳥類の減少について、2つの事例を紹介し、外来種の影響評価・管理について鳥類群集の指標としての価値を考察する。1つは、島嶼に移入された哺乳類捕食者による在来種鳥類の個体数減少である。奄美大島のマングースとアマミヤマシギについて、演者らが紹介してきた。今回は、奄美大島の昼行性鳥類群集へのマングースの影響を検討する。幅50m調査歩行距離2kmのベルトトランセクトによる早朝センサスの結果を、マングースの高密度地域、低密度地域、非生息地域で比較したところ、種数、多様度指数(H')ともに奄美大島内のマングース生息地域ほど低く、非生息地域がもっとも高かった。マングースともう1つの外来種であるクマネズミの生息しない加計呂麻島の調査地では、アカヒゲの生息密度はもっとも高かったが、種数と多様度指数は、マングース生息地域と同等に低かった。2つめは、各地の天然林における生息密度増加が著しいソウシチョウの有無と鳥類群集の構造の変化である。埼玉県奥秩父山地の標高1650mの突出峠のスズタケの中を通過する登山道において、1989〜1995年(期間1)と2006年秋〜2007年(期間2)にかすみ網を地上〜2mに張り林床の鳥類群集を捕獲標識した。1989年8月に秩父山地では初めてソウシチョウを捕獲、標識した。期間1にソウシチョウは、1989年8月に2羽、1994年7月に1羽捕獲されただけで、捕獲されなければ気づきにくい種であった。期間2には、ソウシチョウは常に観察され、7羽と10羽が群れで捕獲され、その回の捕獲個体数の20〜25%を占めた。しかし、明かに減少した在来種はいなかった。これらの結果から、捕食者および競争者としての影響が知られ、あるいは示唆される外来種の存在によって、鳥類群集は変化し、その影響は群衆内の競争者を通じた間接効果によって種ごとに異なっていることが示唆された。