| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(口頭発表) B1-04

光合成型による気孔のCO2応答性の違い

*鎌倉真依 (奈良女大・院・人間文化), 古川昭雄(奈良女・共生センター)

気孔は植物と大気との間でCO2や水などのガス交換を制御しており、植物が光合成を行う上で重要な器官である。気孔の開閉は、光、CO2濃度、水分条件などの環境要因によって制御されている。CO2濃度に関して、気孔は葉内CO2濃度 (Ci) を感知して開閉を行うことが明らかにされており、一般に気孔開度はCiの増加にともなって直線的に減少すると考えられてきた。しかし、Dubbe et al. (1978) は、数種の植物では気孔開度がCO2-freeよりも高い濃度 (Ci=100 μmol mol-1) で最大になったと報告しており、気孔開度とCiとの関係は、必ずしも直線関係にはならないと考えられる。

そこで本研究では、低Ci下で気孔開度のピークが生じる原因とCiに対する気孔応答の種間差を明らかにすることを目的とし、C3植物9種、C4植物5種、CAM植物2種を用いて、Ci (0-350 μmol mol-1) に対する気孔コンダクタンスの応答を測定した。

C3植物の気孔コンダクタンスは、総じてCi=100-200 μmol mol-1で最大になったのに対し、C4植物の気孔コンダクタンスはCiの増加にともなって減少した。C3植物では、光合成によるCO2利用効率と気孔コンダクタンスの間に正の相関が見られた。以上の結果から、C4植物のようにCO2濃縮機構をもたないC3植物は、低Ci下で光合成系がCO2飽和状態にないため、気孔開度が増大することによって、より多くのCO2を獲得し、光合成活性を高めているとの結論に至った。

日本生態学会