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一般講演(口頭発表) B1-05
環境条件に合わせ,樹木は構造や機能を変化させる.本研究では土壌の養分条件の違いに応じて同一樹種がどのように葉や材構造を変化させるかについて調べた.土壌の養分条件の異なる,互いに近接した大津市桐生(風化花崗岩由来の土壌)と大津市瀬田(水成堆積物由来の土壌)において,コナラ(Quercus serrata Murray),ウワミズザクラ(Padus grayana),ソヨゴ(Ilex pedunculosa),リョウブ(Clethra barbinervis),アオハダ(Ilex macropoda)の5樹種各5個体について葉の形態,炭素・窒素含量,水分生理特性,材の構造を比較した.
土壌中のリン量は瀬田で有意に高かった.窒素量とC/N比の平均値は瀬田が高かったが,有意ではなかった.したがって,瀬田の方が全体としてやや肥沃であると判断された.葉の窒素含量は,ウワミズザクラ,ソヨゴ,リョウブでは瀬田が,アオハダでは桐生が有意に高かった.コナラには差は見られなかった.したがって,葉の窒素含量はすべての樹種において土壌影響を反映しているとは言えなかった.葉の原形質分離時の水ポテンシャルではウワミズザクラは桐生でより低くなり,アオハダは瀬田でより低い値となった.コナラ,ソヨゴ,リョウブには差は認められなかった.両調査地の土壌養分の違いは,各樹種の葉の形態や水分生理,養分含量に大きな影響は与えていないと考えられた.ただし,土壌養分の違いによる影響は樹種によって同じではなかった.