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一般講演(口頭発表) B1-06
樹木の葉-枝間の資源配分は、適応戦略の違いにより樹種ごとに異なる。本研究では、同様の環境下に生育する散孔材樹種と環孔材樹種で葉-枝間の資源配分を比較し、その違いを、枝の物理的な支持力に加えて水分通導の観点から検証することを目的とした。資源配分の指標として、葉と枝の乾燥重量の比および葉面積と枝断面積の比、また水分通導の指標として、葉のコンダクタンスと枝のコンダクティビティを測定した。
京都大学付属芦生研究林において、落葉散孔材樹種5種(アカシデ、カツラ、ブナ、ミズキ、ミズメ)、落葉環孔材樹種5種(クリ、ケケンポナシ、ケヤキ、コナラ、ミズナラ)の林冠部から陽葉の当年枝を採取し、葉と枝の乾燥重量、葉面積と枝の断面積を測定した。また散孔材樹種3種、環孔材樹種4種について、Vacuum pump methodを用いて葉のコンダクタンスと枝のコンダクティビティを測定した。
環孔材樹種と散孔材樹種の間で、葉と枝の乾燥重量の比に有意な差は見られなかった。しかし、葉面積あたりの枝断面積として表されるHuber valueでは、環孔材樹種で散孔材樹種よりも低い傾向が見られた。また環孔材樹種で枝のコンダクティビティがより高く、先行研究の結果とは異なり葉のコンダクタンスは低いという結果が得られた。環孔材樹種では散孔材樹種に比べて枝断面積あたりの葉面積がより大きく、枝の水分通導性が高いと言える。また葉コンダクタンスが環孔材でより低いのであれば、葉のガス交換能力が低い可能性が考えられるが、これは枝断面積あたりの葉面積が大きいことで補償されると予想される。これらのことから、落葉の環孔材樹種と散孔材樹種において葉-枝間の資源配分の決定には、枝の物理的な支持力よりも、枝や葉の水分通導性の違いがより影響していると考えられる。