| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(口頭発表) B1-07

林冠ギャップを想定した光環境下における木本4樹種の成長および葉の特性

米田吉宏(奈良県森技セ)

特別天然記念物に指定されている春日山原始林において、街路樹として植栽されたナンキンハゼが分布を拡大している(前迫ら2003ほか)。演者らは、侵入したナンキンハゼの動態を予測することを目的として、春日山原始林主要構成種およびナンキンハゼの生理生態的特性を光環境に着目して調査している。本報告では、ツブラジイ、イチイガシ、カラスザンショウおよびナンキンハゼを対象として、以下の光環境における各樹種の成長特性を比較した。光環境は、閉鎖林冠下(FOR)、1日1時間の直達光が差し込む小規模林冠ギャップ下(GAP)および裸地(OPEN)を想定した3条件とし、寒冷紗を用いて設定した。これらの条件下で各樹種6個体の当年生実生を育て、苗高、根元直径、最大光合成速度(Amax)、個葉の単位面積あたりの葉乾重(LMA)、着葉数、総葉面積および乾重を測定した。

成長量の指標(苗高、根元直径および乾重)は、すべての光環境下において遷移前期種であるナンキンハゼ・カラスザンショウが遷移後期種であるツブラジイ・イチイガシよりも有意に大きかった。葉の特性をみると、前者は後者に比べてAmaxが高く、LMAが小さく、総葉面積が大きい傾向がみられた。乾重は4樹種ともFOR=GAP<OPENの関係があり、今回設定した小規模林冠ギャップ下の光環境は成長量増加をもたらさなかった。しかし、AmaxについてみるとFOR<GAP≦OPENの関係が認められ、1日1時間の直達光が葉の特性に影響を及ぼしていた。また、地下部乾重に対する地上部乾重の割合は、FORおよびGAPにおいてカラスザンショウの値が他の3樹種と比べて有意に大きく、弱光条件への適応の仕方が樹種によって異なっていた。

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