| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(口頭発表) B1-09

リン制限は光合成におけるリン利用効率を増加させるのか?

*日高周,北山兼弘(京大・生態学研究センター)

リンは植物の成長および生理学的特性において最も重要な元素の一つである。一方、熱帯地域に広く見られる風化の進んだ土壌では、土壌中の可溶性リン濃度が低く、そのような土壌に成立する森林では一次生産がリンによって制限されることが報告されている。また、そのような森林では、林分のリン利用は効率化されていることが報告されている。しかし、個葉の光合成におけるリン利用が効率化されているか否かは未解明である。

本研究では、土壌リン可給性の減少に伴う個葉光合成のリン経済を明らかにするため、公表されている世界中の異なる気候の植生における392種の樹木葉のデータとキナバル山(マレーシア・ボルネオ島)で実測したデータを用いて、光合成におけるリン利用効率と葉属性の関係を調べた。

その結果、生葉のN/P比をNに対するPの相対的な可給性の目安と考えると、リン制限がかかる(N/P比の上昇)ほど、光合成のリン利用効率は大きくなることが明らかとなった。一方、光合成における窒素利用効率は、窒素制限がある場合(低いN/P比)とリン制限がある場合(高いN/P比)の両方で,小さくなることが明らかとなった。これらの結果から、リン制限下に優占する樹種が光合成においてリン利用を効率化していることが明らかとなり、光合成のリン利用効率の増加が林分のリン利用の効率化に寄与している可能性が示唆された。

日本生態学会