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一般講演(口頭発表) B1-10
本邦産カエデ属10種(オオモミジ、カジカエデ、イタヤカエデ、ウリハダカエデ、コハウチワカエデ、ミツデカエデ、オオイタヤメイゲツ、アサノハカエデ、カラコギカエデ、メグスリノキ)の発芽特性を調べ、種間を比較することにより、発芽におけるカエデ属種の更新戦略を考察した。発芽試験は、低温域の定温(13℃)、変温条件(10/20℃)、高温域の定温(23℃)、変温条件(20/30℃)の下に行い、1ヶ月間の発芽試験と3ケ月の低温湿層処理を6回繰り返した。なお、発芽試験に供した種子は、2005年10月に採取したもので、充実種子のみを使用した。最初直後、無処理状態において全種とも発芽は見られなかったが、その後、低温湿層処理を繰り返す中で、累積発芽率は上昇した。発芽率は、高温域より低温域で高く、定温より変温条件下で高い傾向を示した。しかし、そのパターンや最終発芽率は、種によって異なり、大きく4つの類型化できた。すなわち、1−2回の冷処理により急激に発芽率が高まり、最終発芽率が50%を超える種群(ウリハダカエデ、カジカエデ、イタヤカエデ)、処理回数が増えるにしたがって、徐々に増加し、最終的に50%に至る種群(オオモミジ、ミツデカエデ)、冷処理回数が増えるにしたがって増加するが、最終発芽率が20%程度にとどまる種群(コハウチワカエデ、アサノハカエデ)、冷処理を繰り返しても、発芽率10%以下と低い種群(カラコギカエデ、メグスリノキ、オオイタヤメイゲツ)である。以上の結果から、今回取り扱ったカエデ属10種はいずれも成熟散布時には休眠状態にあり、低温湿層処理によって休眠が解除されることがわかる。しかし、繰り返し低温湿層処理を行っても、発芽しない種群があり、これらは、散布後、埋土種子集団を形成することが示唆された。