| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(口頭発表) B1-13

セイヨウタンポポによる繁殖干渉がカンサイタンポポを駆逐する(1) 柱頭上のセイヨウ花粉率と結実率の関係

*松本崇(京大・人環),高倉耕一(大阪市環境研),西田隆義(京大・農・昆虫),西田佐知子(名大・博),

近年、侵入種の急速な分布拡大と在来種の減少が各地でみられている。侵入種による在来種の置換は、これまで資源競争の結果だと説明されてきた。しかし、同じような環境下でも侵入種による在来種の排除がみられるところとみられないところがあること、および置換速度が資源競争の結果から推測されるよりもかなり早いことなどから侵入種による在来種の置換は、資源競争のみでは説明できず、近縁種間での繁殖を巡る競争(繁殖干渉)が重要であることが示唆されてきている。

セイヨウタンポポTaraxacum officinaleによるカンサイタンポポT. japonicumの置換はこれまで数多く報告されている。セイヨウは在来種と雑種を作り、雑種強勢により生じた適応度上非常に有利な個体とその子孫が在来種を資源競争により圧巻したと考えられてきた。しかし、タンポポにおいても、資源競争よりも繁殖干渉のほうが重要であることが共同研究者らの先行研究により示唆されてきた。

そこで、本研究では、セイヨウによる繁殖干渉によりカンサイが駆逐されたという仮説を検証するため、カンサイの結実率と周囲2m以内のセイヨウの比率と個体数を調べたところ、セイヨウの個体数ではなく比率がカンサイの結実率の低下に寄与していることがわかった。さらに、カンサイの柱頭上に付着している花粉からDNAを抽出し、6つの遺伝子座により種識別を行ったところ、確かにカンサイの柱頭上に近隣のセイヨウの花粉が付着していることを確認した。

セイヨウの花粉をカンサイの花粉と混ぜて人工受粉した場合の結実率の低下、および野外で繁殖干渉が生じる空間スケールについては、セイヨウタンポポによる繁殖干渉がカンサイタンポポを駆逐する(2)で発表する。

日本生態学会