| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(口頭発表) B2-03

湖の水質汚染と人々の協力モデル:環境保護における集団間の対立

*大野(鈴木)ゆかり(九大・理), 巌佐庸(九大・理)

環境問題の解決は、しばしば人々の協力を必要とする。協力する人々は普通、様々な社会的背景(環境保護の経済的コスト、集団内の同調性、汚染の社会的関心)によって、複数の集団に分けることができる。これらの社会的背景の違いによって、環境保護への協力のレベルが集団によって異なり、集団間の対立が生じることがある。集団間の対立は環境保護における合意形成において障害となるため、対立を解消する必要がある。

このモデルでは、人々の協力行動における社会経済学的選択のダイナミクスと湖の水質汚染のダイナミクスをカップリングし、集団を二つ想定することで、二集団間の協力レベルの違いについて調べた。集団内では多くのプレイヤーが、コストのかからない、環境保護に協力しない選択肢か、コストのかかる、環境保護に協力する選択肢かどちらかを選ぶ。この選択には経済的コストと、心理的コストである社会的圧力が影響する。社会的圧力は、人々が協力的な選択肢を選ぶように働き、多くのプレイヤーが協力する場合や湖の汚染レベルが高い場合に強くなると設定した。

モデルの結果では、例え二集団が同じ社会的背景を持っていたとしても、集団間で協力レベルが大きく異なることがみられた。社会的背景が異なる場合は、さらに集団間の協力レベルが異なりやすくなり、集団間の対立が生じた。このような集団間の対立を解消するためには、集団間の同調性が最も効果的であった。

日本生態学会