| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(口頭発表) B2-05

霞ヶ浦における植物プランクトンの長期変動

*高村典子,中川惠(国立環境研究所)

国立環境研究所は1977年に霞ヶ浦西浦で水質やプランクトン・ベントスのモニタリング調査を開始した。調査は、ほぼ月1回の頻度で現在も継続している。植物プランクトンについては1978年より湖心と高浜入り中央の2地点で種構成、土浦入りと麻生沖の2地点を加えた計4地点で一次生産量(13Cをトレーサーとして用いた擬似現場法による)を測定している。この間、霞ヶ浦では霞ヶ浦開発事業(1971-95年)が進められ、全湖岸築堤によりコンクリート護岸が施され、1996年から水位を約30 cm上昇させて管理されている。1992年から浄化対策として大規模な浚渫が開始され現在も継続されている。今後、2010年から那珂川および利根川の間をつなぐ導水事業の運用開始が予定されている。その他にも、90年頃からブラックバス、ブルーギル、ペヘレイ、アメリカナマズ等の捕食性外来魚が多くなっている。植物プランクトンの総量を指標するクロロフィルa量は、91年までは夏に高く、冬に低いという季節性が観察されたが、92年以降は季節性が明瞭でなくなり、全リン量とクロロフィルa量は冬も値が下がらない状況になっている。さらに、02年以降、クロロフィルa量は夏に低いという逆転が観察されるようになった。優占する夏の植物プランクトン種に着目すると、おおよそ次の3期に分けられる。毎年、夏になると群体を形成するタイプのラン藻Microcystisによるアオコが大発生した78-86年(I期)、アオコの構成種が糸状のラン藻Planktothrixに変化した87-98年(II期)、そしてラン藻の現存量が大幅に低下している99-06年(III期)である。霞ヶ浦の一次生産量は、おおむね400-600 gC m-2 y-1である。ところが、96-99年はその倍の値となった。

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