| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(口頭発表) B2-08

樹林化が進行中の砂州内における樹木の生長と洪水冠水頻度との相互関係について

*武田英祐(埼玉大院),坂本健太郎(株式会社 建設技術研究所),浅枝隆(埼玉大院)

近年、河川改修やダム建設等によって河道の安定性が増し、治水安全度は目覚しく向上した。しかしその一方で、洪水の攪乱規模や頻度が低下したことにより、河道内の砂州において木本類が生い茂り、樹林化が進行している事例が日本各地で報告されている。砂州の樹林化がもたらす影響としては、洪水時に水面上昇を引き起こすこと、樹木の倒伏による堤防の洗掘、樹木が流木化することなど、様々な機構による治水安全度の低下が危惧される。また、洪水による撹乱、植生の破壊、裸地化、植生の回復が繰り返される独特の環境下で成立している、本来の砂州の生態系が消失することも懸念される。

高水敷の樹林化は冠水頻度が極度に低下したことに起因しているのに対して、低水路の樹林化の機構は複雑である。澪筋の洗掘による流路の固定化、砂州の冠水頻度の低下の他にも、流下土砂の細粒化(浅枝、2007)、リターの流下量の増大による栄養塩環境の改善(坂本ら、2007)など必ずしも、単一の理由によっているものではない。

しかし、樹林化が単なる樹木の繁茂だけでなく、土壌の状態に大きな影響を及ぼす草本類の影響を強く受けていること、侵入してくる樹種自体にも順序があることなどを考慮すると(沖野ら2006)などを考慮すると、それぞれの樹種のハビタートの特性の把握、冠水頻度の影響の把握を十分行う必要がある。

こうした背景から、本研究では樹種の分布、樹齢の把握、さらには、形態の把握を冠水頻度との関係で把握し、樹林化における基礎的データの把握を目的とし、荒川中流部の樹林化が進行中の砂州において調査を行った。

日本生態学会