| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(口頭発表) B2-09

地中工事による地下水流動変状による植物への影響予測手法に関する研究

*大西智佳(岡山大・院・環境学),今井紀和((有)アイジオル),西垣誠(岡山大・環境学)

地下水流動の変化による植物への影響はあまり明らかにされていないが、水ストレスに起因する植物の生育阻害は多数報告されている。このため、地中工事による地下水流動の変化が植物へ影響を及ぼすことが懸念されており、その予測手法の確立が求められている。

三次元の飽和・不飽和浸透流解析は、不飽和領域の水分量の径時的な変化の予測も可能な手法であるが、三次元解析を広範囲な領域全体で取り扱う場合、現在の計算機では、その容量に限界がある事により、植物への影響を予測評価するために必要な地表面付近の不飽和地盤を細かく分割することは困難である。

地表面付近の水ポテンシャルの変動を詳細に推定するため、工事により植物が枯死・衰弱した事例を対象として、三次元飽和・不飽和浸透流解析と一次元鉛直解析を組み合わせる手法を試みた。まず、解析領域全体を対象として三次元モデルを作成し、モデルの妥当性を検証した。その後、地表面付近の水ポテンシャルを詳細に把握したい地点を選定し、初期水位として三次元計算で得られた水位分布を与え、境界条件として地表には地下水涵養量を、下面には三次元飽和・不飽和浸透流解析で得られた水位変動を与えて解析を実施した。地表面付近の鉛直メッシュは三次元では1m程度、1次元では1cm程度に分割した。

三次元飽和・不飽和浸透流解析により、地下水位やその変動量が同程度であっても、工事後に植物が枯死・衰弱した地点と、工事により影響を受けなかった地点があり、地下水位やその変動量のみでは、工事による植物への影響を予測評価するには不十分であることが示唆された。また、三次元飽和・不飽和浸透流解析と一次元鉛直解析を組み合わせることにより、地表面付近の水ポテンシャルを精度良く予測することが可能であり、工事による影響を予測評価する手法として有効であることが示唆された。

日本生態学会