| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(口頭発表) B2-10

薪炭林施業は里山の生物多様性を高める

*日野輝明(森林総研関西), 西中康明(大阪府大), 斉藤三郎,阿部晃久・新妻靖章(名城大), 伊東宏樹・松本和馬(森林総研多摩)

兵庫県の猪名川上流域は、茶道に用いる高級炭である池田炭の生産地として古くから知られていたが、今では2軒の生産者によって続けられているにすぎない。本調査では、薪炭林管理が里山の生物多様性に及ぼす影響を明らかにするために、2006年4月から2007年3月まで、伐採後2年目と6年目のクヌギとコナラの薪炭管理林(輪伐期10年)とその放置林、およびアカマツ林の放置林において、下層植物、鳥、チョウ、ゴミムシ類の群集組成とその季節変化の調査を行った。下層植物は方形区調査、鳥とチョウではライントランセクト法によるセンサス、ゴミムシ類では落とし穴トラップによる採集を行った。下層植物の年間合計種数は、薪炭管理林で37-59種、放置林で10-21種と約3倍の違いがあった。鳥は繁殖期には森林タイプ間で観察された種数に違いはなかったが(合計15-19種)、非繁殖期には開けた場所を好む冬鳥や漂鳥の増加により、放置林に比べて1.6倍の種類の鳥が薪炭管理林において観察された(合計25種 vs 15種)。チョウは季節をとおして薪炭管理林で最も多くの種数が観察され(合計25種)、薪炭放置林でやや少なく(19種)、アカマツ放置林では2種類しか観察されなかった。ゴミムシ類でも季節をとおして薪炭管理林において最も多くの種類が採集され(合計15種)、薪炭放置林で最も少なかった(6種)。したがって、下層植物、鳥、チョウ、ゴミムシ類のいずれにおいても薪炭管理林で種数が最も多かった。

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