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一般講演(口頭発表) B2-11
インドネシアの東カリマンタンにおいて、熱帯地域におけるCDM植林が生物多様性にどのような影響を与えるかを評価予測するため、植林からの経過年数にともなう植物相の遷移、天然林、草原等において昆虫、鳥類、小動物などのモニタリング調査を行った。
林床植生は一部の草原種で天然林から離れるにつれて出現頻度が高くなる傾向が見られ、逆に天然林からの距離に影響を受けていると見られる種も若干見られた。昆虫類はいずれの分類群においても,人工造林により昆虫相が豊かになった。チョウ類とカミキリムシ類において,天然林からの距離の効果がみられた。糞・腐肉食性コガネムシ類では,群集の維持には比較的大きなサイズの森林が必要であることを示唆した。捕食寄生蜂の群集解析から、早生樹の植林が、劣化した無脊椎動物群集を回復させる効果をもつことを明らかにした。二次林の無脊椎動物群集に対する天然林からの距離の効果が示された。哺乳類に関しては、二次林の種構成は天然林のそれと比べて異なっていたが,種子散布者などは維持されていたことから、二次林によりCDM植林地における哺乳類多様性の維持が期待できることがわかった。鳥類に関しては、壮齢植林地は若齢植林地に比べ樹高が高く多数の鳥類を維持するが、二次林に比べると多様性が低く、鳥類多様性の維持には二次林の存在が必須であることが明らかとなった。これまでの調査から、人工植栽は多様性の回復には資するものの、完全ではなく、二次林も重要であること、天然林からの距離も重要な要素であることがわかってきた。