| 要旨トップ | | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨 |
一般講演(口頭発表) B2-12
土壌汚染の生物影響を考えるにあたり、汚染物質の土壌中での挙動を把握することが重要である。OECDやISOなどで、単一生物に対する単一汚染物質下における毒性試験法が提案されているが、実際の環境中では多くの生物や物質が共存しており、これらは何らかの相互作用が存在すると考えられる。例えば、ある生物の存在によって、汚染物質が動きやすくなり、その他の生物に影響を及ぼしやすくなることがあるかもしれない。汚染物質の、生物に摂取可能(bioavailable)な画分が増加すると、土壌中での毒性が増すことになる。そのため、その時点の環境影響とともに生物の影響を介して起こりうる汚染物質の挙動を、存在画分の変化として検討した。土壌中において特にその物理的影響力の大きさから、生態系改変者とも言われるミミズが、重金属の挙動を左右する役割を果たすのかどうかを、環境制御室であるアーストロンを用いて実験を行なった。土壌中の対象物質の生物摂取可能な画分の多少によって、影響の生じる程度に差が生じることが考えられる。そこで、既に重金属汚染している野外土壌、及び銅を加えて汚染させた土壌を用意し、その土壌でシマミミズ(Eisenia fetida)を1ヶ月飼育することで、銅の画分変化が生じるかを検討した。画分の測定には、Tessier et al.(1979)を参考に連続分画抽出法を採用した。その結果、銅を加えて汚染させた土壌において、生物摂取可能画分濃度が飼育期間を通じて減少する傾向が見られ、ミミズの存在によってより減少した。一方、汚染を受けてから長期間経過しており、銅が土壌粒子に強く吸着しているような野外汚染土壌は、銅の挙動変化が生じにくいことが示された。