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一般講演(口頭発表) B2-13
背景:生態系に調和した環境保全型農業において、ゴミムシやクモ類など地表徘徊性節足動物相への関心が高まっている。また、海外ではダイズやトウモロコシなど除草剤耐性遺伝子組換え作物の普及とともに、除草管理法の違い(非選択性除草剤散布と従来の耕耘による除草法)が非標的の土壌棲息性動物相に及ぼす影響について注目されている。地表棲息性動物の発生量には、除草方法の違いによる影響も大きいと考えられるが、日本では主に殺虫剤散布の有無によって評価されることが多く、除草(剤)の影響も考慮した調査例はまだ少ない。
方法:2007年、スィートコーン圃場において、除草剤(アトラジン、イネ科以外の雑草に高い殺草効果を示す)と殺虫剤(有機リン・合成ピレスロイド混合剤)散布が圃場内の土壌棲息性昆虫の発生量に及ぼす影響を、除草剤と殺虫剤を散布した二元配置区画(4反復)を設定し、ピットフォールトラップを用いて調査した。殺虫剤は雄穂出穂期から収穫1週間前までの計3回、除草剤は播種1月後(出穂前)に1回散布した。
結果:ピットフォールトラップに捕獲された種のうち、肉食性種であるゴミムシ類(捕獲総数674、11種)、ハサミムシ類(1118個体、オオハサミムシ1種)、クモ類(74個体、種未同定)について解析した。肉食性ゴミムシ類は除草剤散布区で有意に減少し、殺虫剤散布よりも除草による影響の方が大きかった。クモ類は殺虫剤散布区で有意に減少したが、除草剤散布による影響は見られなかった。オオハサミムシは殺虫剤、除草剤のいずれの影響も認められず、処理区間で有意差は認められなかった。このような傾向は2006年に行った小規模試験の結果とほぼ同じだった。