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一般講演(口頭発表) B2-15
姫路城内と周辺の姫山公園には約300本のマツが植栽されており、毎年11月上旬の立冬から翌3月上旬の啓蟄の日までの冬季4ヶ月間、マツにこもを巻く。これは、冬にマツの害虫をこもに集め、春先にこもを焼いて害虫防除する目的の行事である。このこも巻きの害虫防除効果について否定的な報告もあり、実施時期の問題も指摘されている。姫路城の場合、こも巻きは単なる風物詩か、多少とも害虫防除効果があるのか確かめるために、2002年から毎年3月に、外したこもの昆虫調査を行った。調査は、作業員が回収したこもを、採集場所ごとに城の一角に集めてもらい、1枚ずつ点検して中の生物を出来折るだけ丁寧に採集する方法で行った。木の幹側については調査しなかったので、不明である。人手、天候、作業時間等の影響で調査結果にばらつきがあるが、2006年まで5回の調査で採集されたのは、クモ類が最も多く、次いでヤニサシガメの順でそれら益虫が57%を占め、次いでゴキブリの順となった。害虫のマツカレハ幼虫等は僅か4%であった。マツカレハは主に幹側で採集されるという報告もあり、2007年に幹側も調査した結果、こもを外した部分の幹の割れ目に残るものが見られた。これら姫路城での調査結果から、こもは、益虫に越冬場所を提供して増やす効果が大きく、害虫防除効果は僅かであること、こも外し作業では幹の点検も重要であること、こも巻きの昆虫調査は、害虫モニタリングの一方法として有効であること等が再認識された。マツのこも巻きは単なる風物詩ではなく、活用の仕方によっては益虫を増やし、環境に負荷をかけない害虫防除法としての利点がある。しかし、益虫を集めて殺すことにならぬよう、こもの処理には十分な配慮が必要である。