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一般講演(口頭発表) C1-03
日本の落葉広葉樹林の植生地理学的位置づけや植生地理構造を理解する場合,従来あまり着目されていなかったナラ陸型落葉広葉樹林の植生地理的構造を整理し,そのなかで議論してゆく必要がある.東アジアのナラ型落葉広葉樹林に焦点を当て,それらと日本の落葉広葉樹林との植生地理学的関係を検討する.
植物社会学的群集(Association)として記述,公表されている森林群落を対象として,その地理分布と主要構成樹種を検討することで,以下の4タイプの植生地理的分布タイプを抽出した:ダフリア‐アムール型モンゴリナラ‐ヤエガワカンバ林,沿海地方型アムールシナノキ‐エゾイタヤ林,朝鮮半島北部型コナラ‐アカシデ林,朝鮮半島南部型イヌシデ‐アカシデ林 .
これらの分布から東アジアの落葉広葉樹林の植生地理的構造を通覧すると,沿海地方から樹種構成の流れは2方向に分岐する.ひとつは陸続きの朝鮮半島北部,もうひとつは北海道である.朝鮮半島北部では,ダフリア‐アムール要素のうちヤモンゴリナラは主要樹種として継続分布する.沿海地方要素はすべて引き続き分布する.さらに,コナラ,アカシデ,クリが付け加わる.朝鮮半島南部ではモンゴリナラは引き続き分布するが,アムールシナノキ,サワシバ,ツノハシバミは頻度が減少する.イヌシデが付け加わる.沿海地方から北海道への流れを見ると,モンゴリナラがミズナラに入れ代わったことを除けば,樹種構成はおおむね共通する.朝鮮半島北部要素であるコナラ,アカシデが,分布量は少ないながらも出現する.このことは,このタイプが,かつて沿海地方に分布していたアムールシナノキ‐エゾイタヤを中心とする落葉広葉樹林に,ダフリア‐アムール型モンゴリナラ‐ヤエガワカンバ林が混生して成立したことを示唆する.