| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(口頭発表) C1-04

国後島古釜布湿原の植生と微地形

*加藤ゆき恵(北大・院・農), 冨士田裕子(北大植物園), 近藤誠司(北大・院・農), 東隆行(北大植物園)

古釜布湿原は国後島中部の太平洋に面した古釜布市街地の北西に位置し、北部に位置する古釜布沼より流れ出る河川流域から南側の海岸砂丘にかけて、東西約6km、南北約2kmに亘り広がっている。古釜布では舘脇・平野(1936)が砂丘型アカエゾマツ林と湿原型アカエゾマツ林の植生を報告しているが、その後は主に植物相調査が行われている。本研究は希少価値の高い湿原の植生を記載し、立地環境とともに報告することを目的とした。

本研究では湿原を南北に横切るラインを設定し、ライン上の微地形測量と植生調査を行った。また、湿原全体を把握するために湿原辺縁部2ヶ所でも調査を行った。

調査域の植生は湿原草本植生とアカエゾマツ林植生に大きく区分され、湿原草本植生はシュレンケとそれ以外に分けられた。シュレンケ植生は湿原中心部、古釜布沼付近、湿原辺縁部の場所ごとに3つの植生を区分した。シュレンケ以外の植生は、ローン植生、ブルテ植生、高山性の種が多く見られる植生の3つに区分された。

アカエゾマツ林植生はアカエゾマツ純林とアカエゾマツ・トドマツ混交林があり、後者で林床構成種数が多かった。舘脇らの結果と比較すると、今回調査したアカエゾマツ林はいずれも海岸近くの砂丘列上に成立しているが、構成種から湿原型アカエゾマツ林に相当すると考えられる。

調査域の微地形は海岸近くの砂丘列が高く突出する以外は概ね平坦で、ミズゴケが発達した湿原中心部は周囲と比べて僅かに比高が高くなっていた。一方、湿原辺縁部ではケルミ−シュレンケ複合体が確認された。

古釜布湿原は希少種や貴重な植生が残されているが、現在保護地域に指定されていない。国後島最大の町にも近く今後の環境悪化が懸念されることから、何らかの保護対策が必要と考えられる。

日本生態学会