| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(口頭発表) C1-07

ラオス移動耕作地の植生回復モデル

*千葉幸弘,清野嘉之,落合幸仁(森林総研),浅井英利(京大農),井上吉雄(農環研)

ラオス山岳地の移動耕作地における食糧生産と炭素蓄積機能の調和をはかる生態系管理法の開発を目的として、焼畑休閑地の植生回復過程や炭素蓄積に関わる林分構造やバイオマス等の調査を行っている。焼畑耕作終了後の休閑期間(0.5、1.5、3.5、4.5、17.5、20.5年)を異にする固定試験地6プロットを設定して、種組成、成長量、新規加入・枯死等の毎木調査を行って、植生回復過程を5年間にわたって追跡した。

休閑年数とともに植生の空間構造や種組成が変化し、ほぼ3年目以降、群落構造としては上層と下層の植生が分離し始めた。調査区内で再生あるいは新たに侵入する樹木本数は徐々に増加するが、林冠の閉鎖とともに安定する傾向が見られた。また林冠閉鎖に伴って下層植生の現存量が規定される様子も今回までの調査で明らかになり、こうした焼畑耕作地の休閑年数に伴う植生再生過程を表現する以下のようなモデルを構成した:

(1)土地条件を反映させるパラメータは、上層群落の最大高Hmaxとする。

(2)上層群落高Hの成長曲線は、群落齢tを変数とするミッチャーリッヒ式で表現した:

 H = Hmax ( 1 - exp( - a/Hmax t ) )

(3)林冠を構成する上層木の本数密度Nの最大を約1000本/haとするが、自己間引きにより本数Nは漸減する。

(4)群落高Hと本数密度Nを与えると、平均的な林木個体の樹形(樹高、胸高直径、葉・枝・幹・根の重量、樹冠幅、樹冠長など)が決まるモデルを採用した。

(5)上層木の樹形が決まると、林冠の被覆状態が計算され、林内光環境が推定できるので、それに伴う下層植生量が推定される。

日本生態学会