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一般講演(口頭発表) C2-03
北米原産の外来魚種カダヤシは,本邦に台湾経由で移入された後,1970年代以降にボウフラ駆除を目的に日本各地に移殖され,特に平野部の水田周辺水路において優占種となっている地域が多く見られる.一方,本邦の在来魚種であるメダカがほぼ時期を同じくして個体数が減少してきたことから,カダヤシのメダカに対する競争及び捕食等の影響が指摘されてきた.しかし,両種間の生物的相互作用について野外条件下で個体群密度や微生息場所環境の解析によって詳しく検討した研究例はほとんど無い.そこで,本研究ではカダヤシがメダカに及ぼす影響を明らかにすることを最終的な目的に据え,愛知県西部を中心とする20箇所の農業排水路で両種を含む生息魚類の個体群密度及び微生息場所環境を定量化した.
調査の結果,13魚種が確認され,採捕された全個体の約48%をカダヤシ,約28%をメダカが占め,両種の同所的生息水域は12箇所に上った.両種の個体群密度の間に負の相関は認められなかった.また,両種の個体群密度の多寡を微生息場所環境要因から説明することはできなかった.一方,カダヤシと同所的に生息するメダカの中には,異所的に生息する個体よりも鰭を損傷していた個体が多く認められ(確認個体数の36%),加えてカダヤシ個体群密度との間に有意な正の相関が認められた.さらに,野外水路における行動観察の結果,両種の間に干渉行動が認められ,攻撃頻度はカダヤシの対同種個体,対メダカ,メダカの対カダヤシ,対同種個体の順に高かった.これらの結果は,行動レベルでカダヤシとメダカの間に前者の後者に対する排他的な競争的影響(鰭の損傷)が存在することを示唆するものの,個体群レベル(生残)では示唆していない.したがって,メダカ個体群密度はカダヤシによる競争以外の要因(生息可能な水路の連結性,水位変動,餌資源量等)によって規定されている可能性がある.