| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(口頭発表) C2-04

諏訪湖におけるオオクチバスの移動

川之辺素一(長野県水産試験場諏訪支場)

オオクチバスなどの外来魚(捕食者)はフナ類など在来魚(被捕食者)に対する脅威であるため、その生息地利用や移動を考慮して対策をはかる必要がある。湖に生息するフナ類は生活史のさまざまな段階において湖-河川-水田水路といった異なる生息地を利用する。一方、外来魚の生息地利用はよくわかっておらず、外来魚の侵入状況によっては在来魚に捕食の影響が大きい生息地や時期が生じている可能性がある。そこでフナ類の繁殖場である流入河川に着目し、2006年春から2007年冬にかけて諏訪湖南東部に位置する6つの河川に11定点を設け投網によるオオクチバスの捕獲を試みた。その結果(1)オオクチバスを捕獲できた河川とできない河川があった。(2)捕獲できた河川でも時期により捕獲状況が異なった。特に、夏季には捕獲できなかったが、秋季から捕獲できた河川が多かった。調査河川の上流域でのオオクチバスの生息状況を考慮すると、諏訪湖で生息しているオオクチバスが流入河川へ移動したと考えられた。また、調査河川のひとつである新川では例外的にオオクチバスのふ化仔魚が確認され再生産が行なわれていると考えられた。これらの調査結果から移動が起きる要因について水温等の物理化学的環境データを基に考察を行なった。

諏訪湖におけるフナの繁殖期は3〜6月であるが、その期間中一部の河川でオオクチバスが移動していることがわかった。今後は外来魚の胃内容物を確認し在来魚への影響を把握する必要がある。

この研究は環境省地球環境保全等試験研究費「在来淡水魚保全の為の生息地ネットワーク形成技術に関する研究」平成18-20年度において行った。

日本生態学会