| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(口頭発表) C2-08

外来種カミツキガメの根絶可能性:不確実性を考慮した個体群動態モデルによる予測

*小林頼太(東大・農・生物多様性)・長谷川雅美(東邦大・理・生物)・宮下直(東大・農・生物多様性)

外来種の侵入は,生物多様性の減少や経済的な損失を引き起こすことがあり,重大な環境問題のひとつといえる.これまでに外来種の管理として様々な取り組みが行われてきたが,根絶の可能性について科学的な根拠に基づき実現可能性を評価した例は数少ない.

本講演では,近年全国各地の野外から発見が相次いでいるアメリカ原産のカミツキガメを対象に,行列モデルによる個体群動態と根絶に必要な努力量を予測し,根絶事業の実現可能性について検討を行った.

対象としたのは,千葉県印旛沼流域のカミツキガメ個体群である.個体群サイズ,産卵数,卵の生存率等のパラメータは印旛沼個体群からの情報を使用し,不足した幼体や成体の生存率パラメータについては原産地の値を外挿した.移動頻度が低く,局所密度差が大きいことから,カミツキガメの個体群は行動圏サイズで区切った局所個体群の集合と考え,局所間の移出入率は標識調査の結果を用いた.駆除数は密度低下に伴う効率低下を考慮し,頻度を変えた複数の駆除シナリオについて,30年間のシミュレーションを行った.また,個体数の推定誤差,駆除効率,外挿したパラメータの妥当性など,不確実な要因については,現実的な範囲内でパラメータを変化させたモデルを比較することで,その影響の大きさを評価した.その結果,駆除期間を夏季限定にした条件で25晩/年の高頻度駆除であれば,多くのシナリオで30年以内に根絶が可能であった.また,不確実性としては,外挿した生存率パラメータよりも,推定個体数や駆除効率の誤差の影響の方が大きかったことから,駆除をしていくなかでパラメータを取得し,予測精度を向上させることが可能とみられる.

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