| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(口頭発表) C2-12

衛星画像を用いた尖閣諸島魚釣島のヤギによる植生変化の追跡

*横畑泰志(富山大院・理工学),横田昌嗣(琉球大・理),星野仏方,金子正美(酪農大・環境システム)

尖閣諸島魚釣島では、1978年に日本人の手によって意図的に放逐されたヤギ Capra aegarus が数百頭にまで増加し、食害や踏圧によって植生に影響を及ぼし、島の随所で裸地が形成されている。演者らが分析した2000年の高解像度人工衛星イコノスの画像では、総面積3.8km2のうち、13.59%が裸地で占められていた。尖閣諸島最大の島嶼である魚釣島からは少なくとも動物10種、維管束植物3種2変種に及ぶ多数の固有生物が確認されており、現状を放置すればそれらは確実に絶滅を免れない。しかし、尖閣諸島の領有権をめぐる問題と近年の日中関係の悪化によって、上陸調査やヤギの除去は現在非常に難しい。

一方、イコノスを上回る高解像度衛星Quickbirdが2003年4月、2004年5月及び12月に魚釣島の画像を撮影しているなど、2000年以降にいくつかの新たな画像が得られている。演者らは現在、それらを用いて島の植生の現状把握を試みている。例えば、人工衛星FORMOSAT-2の画像から土地被覆分類を行い、植生分類図を作成し、植生の被害状況を推定する。また、1978年に撮影された空中写真とGISを用いて比較し、被害拡大地域を抽出するとともに、被害地点の植生及び地形特性について空間解析を行う予定である。

参考論文: Yokohata Y., Ikeda Y., Yokota M. & Ishizaki H.(2003)The effects of introduced goats on the ecosystem of Uotsuri-Jima,Senkaku Islands, Japan, as assessed by remote-sensing techniques. Biosphere Conservation, 5: 39-46.

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