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一般講演(口頭発表) C2-13
外来牧草は、草地からエスケープして増殖し生態系や人間活動への影響が特に大きい「侵略的外来種」とみなされており、2005年に施行された外来生物法でも要注意外来生物にリストされている。外来牧草が雑草化するリスクや条件を明確化し、それを回避する管理方法の開発が重要である。
演者は過去9年間、宮崎県串間市都井岬の岬馬の放牧地(国指定天然記念物)における草地生産力の場所、季節、年次における変動と岬馬の放牧頭数との関係について調査してきた。その過程で、小松ヶ丘地区(都井岬では小松ヶ丘地区と扇山地区が大面積での放牧地である)では、バヒアグラスやカーペットグラスなどの外来牧草(暖地型牧草)が雑草化して増加し、日本在来の野草の優占度は次第に低下していることが明らかとなった。現在の小松ヶ丘地区の放牧地の多くは外来牧草で覆われている。都井岬の岬馬生息地が国の天然記念物に指定された理由の一つである、「シバ型草原の南限地」は危機的状況にある。当初は地球温暖化の影響を疑ったが、扇山地区ではシバなどの日本在来の野草が優占する植生が持続しているため必ずしも温暖化だけが原因とは断定できない。野外調査によって、扇山地区には外来牧草が侵入しているが雑草化が進行していないことが明らかとなったのである。扇山地区のシバ型草地は外来牧草の侵入に対する抵抗力が高いようである。この理由を明らかにすることは外来牧草の雑草化を回避する管理方法を明らかにする上で重要である。
今回は、場所によって外来牧草の優占化の速度が大きく異なったこと、そしてこの優占化の程度に及ぼす、地形や放牧圧の影響を検討した結果を報告する。