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一般講演(口頭発表) C2-14
ブラジルチドメグサ Hydrocotyle ranunculoides は、多年生の水生植物で、2005年に外来生物法に基づく特定外来生物に指定された。本種は、国内では1998年ごろに菊池川流域(熊本県)で初めて確認された。また、2007年には筑後川上流域(大分県)においても大繁茂が報告された。本種は、最近、福岡県筑後地域の有明海沿岸域のクリーク(貯留機能を持った人工的な水路)にも侵入しているが、分布実態などについてはほとんど不明である。このため、演者らは、この地域における本種の分布、生育特性などを把握するための調査を行っている。
2007年6〜7月における調査の結果、本種は3次メッシュ(約1kmメッシュ)28区画のクリークに生育していた。特に、柳川市、筑後市、大川市、大木町にまたがる東西9km、南北4kmの範囲内に分布が集中していた。節ごとに根を出した本種の茎は容易に切断されるので、分布域が東西に広がっていること、この区域のクリーク・河川が西〜南西方向に流れていることなどから推測して、水流による切れ藻(植物体の断片)の分散が、この区域における分布拡大の要因の一つと考えられる。
植被の季節変化を把握するために、流程50mの定点を29地点設定した。6〜7月に本種が生育していた29地点のうち、10月には8地点で消滅、13地点で植被が減少していた。梅雨明け後の8月に、葉が白色化し茎が朽ちる現象が広範囲に見られたので、高温障害による枯損・成長低下が生じた可能性が考えられる。
一方、12月には、現存21地点のうち9地点で植被が10月に比べて増加した。10月に植被率1%未満であっても12月に消滅した地点は見られなかった。この時期にはボタンウキクサ、ホテイアオイは葉が枯れ始めていたので、本種はこれら2種に比べて低温に対する耐性があると思われる。