| 要旨トップ | | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨 |
一般講演(口頭発表) D1-01
オスとメスにとっての最適なmating rateの違いが引き起こすオス-メス間の利害の対立(性的対立)は、繁殖に関わる形質における急激な進化、多様化、あるいはその帰結の一つとしての種分化などを引き起こす原動力として近年非常に注目されてきている。
近年、内部共生細菌の感染が宿主メスの繁殖形質の形態変化を引き起こす例が明らかにされた。その繁殖形質は宿主メスのmating rate(fertilization rate)に大きな影響を持つ形質であることが知られている。そのため、それらの内部共生細菌は、宿主メスのその繁殖形質を変化させることにより宿主オス-メス間のmating rateを巡る性的対立の動態に何らかの影響を与えていると考えられる。
本研究では量的遺伝モデルを用い、内部共生細菌が宿主メスの繁殖形質の変化を引き起こす場合における、内部共生細菌-宿主メス-オス間でのmating rateを巡る性的対立の動態および内部共生細菌の感染動態についての解析を行った。
その結果、(1)内部共生細菌の感染による繁殖形質の形態変化は、宿主の性的対立の動態を変化させることを通じて、その内部共生細菌の宿主集団における感染維持を引き起こしうる(2)異なる宿主集団に異なる系統の内部共生細菌が感染することにより、それらの宿主集団間に急激な種分化が引き起こされうる、ことが示された。