| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(口頭発表) D1-04

高知県南西部の島嶼部におけるシーボルトミミズの形態に関する研究

*南谷幸雄(愛媛大・院・連合農), 福田達哉(高知大・農)

高知県南西部の島嶼2ヶ所(沖ノ島、鵜来島)と高知県南西部から中部にかけての3ヶ所(足摺、須崎、土佐山田)におけるシーボルトミミズMetaphire sieboldiの生重比較に関して、これまで島嶼部の個体群は高知県本土の個体群に比べ、有意に重いことが明らかにされている。この違いをもたらす要因について、各調査地の平均気温、湿度、年降水量、土壌化学性(pH、EC、CN比)の検討を行った結果、春先の気温が高く、土壌のpH、ECが大きく、かつCN比の値が小さい方ほどシーボルトミミズの生重が大きくなる傾向を示すと報告されている。しかし、対象とする個体群間で系統が異なる場合、環境的要因ではなく遺伝的要因が強く影響し、又島嶼部といった特殊な環境では、創始者効果や瓶首効果により一部の系統のみが分布している可能性があるため、島嶼部とそれを取りまく地域の個体群の系統関係に関して検討を行う必要がある。そこで演者らは、ミトコンドリアDNAを用いた分子系統解析により、シーボルトミミズがどのような過程を経て現在の分布を成立するに至ったのかを明らかにし、島嶼部とその近隣地域での個体重の差の遺伝的背景について検討することを目的として研究を行った。

本研究は2006〜2007年に四国、中国地方、九州の太平洋側の計44地点から採集した109個体のシーボルトミミズの標本を用いた。これらの標本から全DNAを抽出し、PCR法を用いてミトコンドリアDNAのCOI領域を増幅後、シーケンサーを用いて412bpの塩基配列を決定し、得られた塩基配列を最節約法・近隣結合法・最尤法を用いて系統樹を作成した。そこで本講演にてこれらの系統樹に基づいた、島嶼部と近隣地域の生重の違いをもたらす要因について議論する。

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