| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(口頭発表) D1-05

動物プランクトンの休眠卵と富栄養化の逆説

仲澤剛史(京大・生態研セ),桑村雅隆(神大・発達科学),山村則男(地球研)

近年、動物プランクトンの休眠卵がプランクトン群集のダイナミクスに大きな影響を与えることが明らかになりつつある、しかし、休眠卵のダイナミクスを考慮した理論的研究はまだなく、ダイナミクスに対する休眠卵の長期効果は不明である。そこで本研究では、休眠卵のダイナミクスを明示的に組み込んだ数理モデルを用いて、動物プランクトンによる休眠卵の産生によって動物プランクトン−植物プランクトン系が安定化する可能性を調べた。モデルでは、植物プランクトンの成長率が季節的に変化すること、動物プランクトンが季節的に、もしくは餌不足に応じて休眠卵を産むこと、休眠卵は季節的に孵化することを仮定した。その結果、休眠卵の産生は貧栄養条件下で動物プランクトンの絶滅リスクを増加させたものの、以下の安定化効果が予測された: 分岐の抑制や個体群変動の振幅の抑制、持続的な共存パラメーター領域の拡大、最小密度の増加。これらの予測は先行研究における実験的主張を支持し、休眠卵産生がプランクドン群集の安定性や持続性に寄与することを示唆する。

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