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一般講演(口頭発表) D1-08
伊豆沼は宮城県北部の仙北平野に位置する面積3.7 km2、最大水深1.6 m、平均水深0.76 mの浅い湖である。伊豆沼において、2006年5月より2007年12月まで底生生物のオオユスリカ幼虫(Chironomus plumosus)を採集し、各個体の炭素安定同位体比を質量分析計により測定した。その結果、オオユスリカ幼虫の炭素安定同位体比δ13Cの値は、-27〜-52‰の範囲の値を示し、非常に低い値の個体がいることが分かった。δ13Cが-50‰近くの値をとる個体が採集された時は、個体間のδ13C値の分散が大きくなり、この分散には季節的な変動がみられた。ユスリカ幼虫が低いδ13C値をとる現象は、琵琶湖やヨーロッパのある程度深い湖沼においても報告されているが、伊豆沼のような浅い湖沼では報告例がない。堆積物中の有機物のδ13Cの値が-28‰であることから、δ13Cの値の低いオオユスリカ幼虫の個体は堆積物中の有機物の一部を選択的に食べている可能性が高く、その餌候補としては、嫌気環境において生成された低い炭素安定同位体比を持つメタンガスを、好気的環境に出てきたところで利用するメタン酸化細菌が考えられる。そこで、ヘッドスペース法により採取した堆積物中のメタン濃度をガスクロマトグラフィーで測定し、その季節変動を調べた。また、堆積物中より抽出したDNAからメタン酸化細菌のもつ遺伝子を増幅し、変性剤濃度勾配ゲル電気泳動(DGGE)法によりメタン酸化細菌群集の季節変化を調べ、オオユスリカ幼虫の炭素安定同位体比の季節変動との対応を検討した。