| 要旨トップ | | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨 |
一般講演(口頭発表) D1-11
捕食の危険を感じとった動物は、行動を変化させ身を守る。被食動物の行動変化は、捕食者や他種との相互作用の強さやありかたを変えることで、群集の構造に影響しうる。このような、動物の行動変化の生態学的意義は、個体の形質の機能に注目して群集動態を解釈しようとするたくさんの研究者によって明らかにされてきた。近年、進化生態学者はさまざまな被食動物が、捕食の危険に応じて、行動だけでなく形を変えることを発見し、その防御機能を明らかにしてきた。では、形態変化の生態学的意義とはなんだろうか? いいかえれば、動物の形態変化はどのように相互作用に影響するのだろうか? エゾアカガエルのオタマジャクシ(以下オタマ)は、捕食者のエゾサンショウウオ幼生(以下サンショウウオ)がいる場合に、皮下組織を肥厚し、頭胴部を大きく膨らませることで、サンショウウオに丸呑みされるのを防ぐ。私たちは、自然の池に囲い網を設置し、操作実験により、オタマの防御形態の生態学的意義を探った。網の中には、池での実際の密度を再現するようにオタマとサンショウウオを入れたが、半数の網のオタマは防御形態を発現したものとし(防御処理)、残りの網には、防御形態を発現していないものを入れた(非防御処理)。実験開始から3日後、2種の数を調べたところ、非防御処理に比べ、防御処理ではオタマが多く、サンショウウオは少なかった。これは、サンショウウオが、防御形態をもつオタマを捕食できず、共食いを強めたことを意味している。また、形態計測の結果、小さなサンショウウオほどよく共食いされたことがわかった。以上の結果は、オタマの防御形態への変化が、サンショウウオの捕食様式を変え、サンショウウオの数とサイズ構成に影響する可能性を示唆している。