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一般講演(口頭発表) D2-02
択伐が熱帯雨林の林分構造及ぼす影響を評価し、その修復過程を解明することを研究目的とする。調査は、西スマトラ州の州都パダン市近郊の標高600mに分布する丘陵性熱帯雨林で行った。調査面積は6.5haで、96年から07年までの11年間にdbh≧10cmの林木を対象に計7回の毎木調査を実施した。森林構造は複雑であるが、高い幹材硬度をもつ大径木を成熟林の指標として、その水平分布パターンから調査区を“伐採圧が低いPIN区”、“択伐が進行形のA区”と“択伐がほぼ終了したB区”に分け、それら3区間での構造特性の比較から択伐の影響と修復過程を評価した。構成種の潜在的最大肥大成長率は、潜在的最大直径および幹材硬度と負の相関性を示した。すなわち、幹材硬度が低い種では潜在的最大肥大成長率が高く、潜在的最大直径が小さい傾向を示した。このトレードオフ現象が撹乱圧に対する種構成の変化を誘引しているものと推察した。上記3要因に基づいた構成種ギルドの動態について考察する。各区において100m2単位で算出したBA(胸高断面積合計)の度数分布は対数正規型を示した。択伐が進すむA区では、BAの平均値(対数値)の減少に伴い変動係数(CV)はほぼ直線的に増大し、97年ではB区の96年の値に近づいた。植生回復が進むB区では、A区のパターンを逆戻りする形で変化したが、同じBA平均値でCVを比較するとA区より小さい傾向を示した。同様の傾向がA区とPIN区間でも認められた。これら資料に基づき、択伐が林分の3次元区間構造(環境)の多様性に及ぼす影響を考察する。