| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(口頭発表) D2-07

常緑広葉樹と落葉広葉樹の葉の量的防御水準と大型土壌動物

*川野浩一,米山仰(高知大院・農),塚本次郎(高知大・農),長井宏賢(高知大・暖地FSセ)

高知大学嶺北フィールドには同一斜面上で横並びに隣接する極相に近い常緑広葉樹林(以下EBF)と途中相の落葉広葉樹林(以下DBF)がある。そこで、遷移段階の違いが森林生態系に及ぼす影響を解明する目的で、極相種のアカガシと、途中相の樹種アカシデ、ヤマザクラ、コナラについて葉の量的防御特性(縮合タンニン濃度、硬さ、厚さ)を測定し、それが有機物の分解(リター回転率、A0層と土壌のC/N、A0層と土壌の炭素集積量)と大型土壌動物の林分間での違いに及ぼす影響を調べた。葉の量的防御水準の低い落葉樹が優占するDBFに比べて、それが高いアカガシが優占するEBFでA0層と土壌のC/Nが高く、土壌断面への炭素集積量が大きかった。これは微生物による有機物の無機化速度がDBF>EBFであったことを示す。しかし、土壌酸度は林分間に差がなく、大型土壌動物の現存量、特に腐食動物のミミズの現存量はDBF<EBFであった。落葉広葉樹林での大型土壌動物の現存量は、一般に、無機化速度の遅いモル型土壌で小さく、ムル型土壌で大きい。モル型土壌の未分解有機物起源の強酸性がミミズの生息に不利であることがその一因とされている。一方、微生物による無機化速度には違いがあり、土壌酸度には差の無い熱帯の低地フタバガキ林と山地林の比較では有機物の集積量の多い山地林で大型土壌動物の現存量が大きかったとの報告がある。本調査地での結果は後者の事例に類比される。大型土壌動物の現存量は土壌が酸性化しない範囲では、微生物による無機化速度が遅く、有機物集積量が多いほど大きくなるのではないかと考えた。その場合、大型土壌動物は有機物の分解において微生物の作用を補う機能をもつことになる。

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