| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(口頭発表) D2-08

長野県松本市におけるヘイケボタル(Luciola lateralis)の生活史

*関口伸一(信州大学 工学系研究科 地球生物圏科学専攻) 山本雅道(信州大学 山岳科学総合研究所)

ヘイケボタルは、日本中に分布し、水田、流れの緩やかな水路や湿地などに生息している。長野県松本市内の水田や用水路に生息するヘイケボタルの成長や齢構成は生息環境によって異なっている。その要因が、生理的なものであるか、生態的なものであるかを明らかにするために様々な温度条件や日長条件下で飼育観察を行った。

市内で捕獲したヘイケボタルの成虫から採卵を行い、14〜26℃の5段階の温度で1匹ずつ底直径5cmの容器に入れて単独飼育した。また、14〜24℃の6段階の温度で17cm×23cmの容器を用いて、約150匹で集団飼育を行った。その結果、単独飼育の幼虫は、集団飼育と比べ温度が低い場合、生存率は低くなった。また、一齢、二齢、三齢の発育期間は単独飼育では大幅に長くなった。このことから、ヘイケボタル幼虫の発育には集合効果があることが示唆された。休眠する齢は恒温条件で飼育した場合、低温なほど若齢となることが示された。また、単独飼育は集団飼育に比べ、若齢で休眠することが示唆された。発育条件が悪い場合、若齢で休眠する可能性が考えられた。

ヘイケボタル幼虫の発育速度に対する日長の影響を調べるために20℃の恒温で様々な日長で単独飼育を行った。また、幼虫が四齢になってから、半数の幼虫を長日日長と短日日長を入れ替え、四齢の発育速度に日長の変化が与える影響を調べた。これらの結果から、日長はヘイケボタル幼虫の発育に影響しないと考えられた。

ヘイケボタルの幼虫は、集団で生息することで適応度をあげ、生息環境に応じた発育段階で休眠することで環境への適応や生活環の調整をしている可能性が示唆された。

日本生態学会